つながるコラム「絆」 vol.94 安来市 ・ 足立昌俊さん

やすぎ地区本部

数あるぶどうの中で一目惚れした「神紅」

足立昌俊さん(65歳)

やすぎ地区本部

数あるぶどうの中で一目惚れした「神紅」

島根県の特産品の一つであるブドウ。県内各地で栽培され、安来市もその一角を担っています。
 足立昌俊さんの「足立ぶどう園」は月山富田城跡の近く、豊かな緑に囲まれた場所にあります。足立さんが前職を辞め、先代である父親からブドウ栽培を受け継いだのは2006年のこと。足立さんの父親は「巨峰」や「デラウェア」などを中心に育てつつ、新しい品種にも挑戦していました。足立さんはそこからさらに品種を広げ、最大で35品種を栽培。現在は、人気のブランドや市場の変化に合わせ、27~28品種程度に厳選し栽培しています。

 7月中旬の「デラウェア」に始まり、「富士の輝き」、「ベニバラード」、「キングデラ」、「ハニーヴィーナス」、「巨峰」、「クイーンニーナ」、「シャインマスカット」、「ピオーネ」など多様な品種を10月上旬まで出荷。その中でも特に情熱を注いでいるのが「神紅(しんく)」。島根県のみで栽培されている島根県オリジナル品種で、深みのある紅色と高い糖度が特徴です。 
 足立さんが「神紅」に出合ったのは2017年のこと。足立さんは「島根県農業技術センターの視察で見てビビッときたんです。『これしかない!このブドウに賭けよう!』と思いました」と昨日のことのように振り返ります。

試行錯誤の末、高い糖度を実現

 「神紅」栽培の初年度は10本からスタートし、糖度の高い粒に仕上げるための挑戦を続けました。糖度の上昇が停滞する梅雨時に散布する液肥のバランスや葉裏の蒸散を促進するためのケア、暑さによるストレスの軽減、ジベレリン処理の調整、秋雨前線がやって来る前の対策など試行錯誤を繰り返し、足立さん独自のベストな栽培方法を確立。光合成のサイクルや実をつける際に必要な栄養を把握し、適切な世話を適切なタイミングで行うことが大切なのだそう。足立さんは「『神紅』のポテンシャルを最大限に引き出すのは大変な苦労がありました。普及員の方が袋がけなどさまざまな試験をしてくれたのも助かりましたね」と話します。

 今では「神紅」らしい気品のある紅色に張りのある食感、みずみずしさ、そしてスイーツのような甘さを揃えた実ができるようになっています。「粒が大きい房が好まれますが、やはり『神紅』は味が素晴らしい品種。甘く香りが良い粒にすることに振り切って栽培方法を編み出しました」と話します。
 取材中に糖度を計測してもらうと、23度、25度、27度と高い数値が次々と叩き出されていきました。ただ甘いだけでなく、果汁が爽やかで、アールグレイのような「神紅」独特の香りが鼻腔に心地よく抜けていくのも魅力です。
 今後は収量1トンを目標にしつつ、摘粒の技術をさらに磨きたいという足立さん。「バランスの整ったきれいな房にするのは難しいけれど楽しいです。美術的な感性が求められる作業で、やりがいがあります」と笑顔で話します。

次世代を育て、ブランド力を高めたい

 やすぎ地区本部ぶどう生産協議会内の「神紅研究会」のメンバーである足立さん。近隣農家や若手農家に技術を惜しみなく教えています。Iターンで新規就農した人もおり、若いイチゴ農家に農閑期にブドウ栽培を挑戦したいので教えてほしいと頼まれることも。足立さんは「『神紅』は手間がかかりますが単価が高いブランド。挑戦する価値が高いんですよ。島根のブドウ栽培は伸び代があることとともに、〝儲かる農業〟の一つの形としてどんどん広めたいです」と意気込みます。また、コーディネーターに協力を仰ぎ、ブランディングも学んでいます。

 「神紅」は年々ニーズが高まっています。ある企業から、足立さんの農園では短期間では用意できないほどの量の仕入れを打診されたことも。「邑南町などでも若い人たちが頑張っていますが、安来市でも体制を整え、出荷量を増やしてしっかりニーズに応えられるようにしたいです。収量アップはブランド確立の欠かせない要素でもあります。そのためには仲間を増やさないとね!」と足立さんは意欲を燃やしています。



バックナンバーへ >>