つながるコラム「絆」 vol.93 江津市・邑南町 ・ JAしまね島根おおち女性部

島根おおち地区本部

パプリカで盛り上げ、仲間と地域を支えたい

JAしまね島根おおち女性部

島根おおおち地区本部
副部長 寺内洋子さん (74)
坂田マチ子さん (76)
沖田久美子さん(64)

「幸せの4K」のケイトウ栽培を開始

島根県の中央から南部にかけて美しい里山が続く江津市(桜江町)と邑智郡。この地で、鮮やかなケイトウの花を咲かせ、地域に活気をもたらしているのがJAしまね島根おおち女性部の皆さんです。
以前から地区本部管内の各地域で、女性部はそれぞれの活動を行っていました。「農業を通じて地域に貢献したい」という思いから、活動の基軸を営農に一本化。当初は、キュウリやナスといった野菜作りに取り組んでいましたが、部員の高齢化により重い野菜の収穫や出荷の作業が辛くなり、さらにサルやイノシシによる鳥獣被害に悩まされ、離農する部員が増えていました。
そんななか、2012年にJAの営農指導員からケイトウ栽培を提案されました。ケイトウ栽培は「幸せの4K」といって、花が「きれい」で、サルが「こない」、収穫作業が「かるい」、そして「かせげる」という4つのKが魅力です。女性にとって取り組みやすいことが決め手となり、新たに挑戦することになりました。当初は全員が初心者。営農指導員が畑の作り方から栽培方法、苗の植え方まで丁寧に指導し、なんとか出荷できる状態まで育てることができました。寺内さんは「最初はおんぶに抱っこで。一から教えてもらいました」と当時を振り返ります。

島根おおちのケイトウは高品質で人気

島根おおちのケイトウは、県内でも早くからブランド化が進み、栽培を始めて2、3年目には「島根おおちの花は良い」と県外の市場から高い評価を得てきました。これは、JAの熱心な指導と、それに真摯に応えようとする部員の皆さんの二人三脚の努力によるものと言えます。
毎年出荷シーズン直前に行われる, 「目合わせ会」は生産者にとって貴重な機会。広島から市場の担当者に来てもらい、産地ごとの特徴や、市場での需要について情報を共有してもらいます。現在、市場での取り扱いは徳島、福岡、島根の3つの産地が中心であり、そのなかでも島根おおちのケイトウは品質が良く、花屋にとても人気があると説明がありました。
市場ニーズは主力の赤いケイトウに加え、オレンジやピンクも高くなっているそうです。しかし、ピンクは茎が平たくなりやすいなど難しい点も多いといいます。それでも、市場の声に応えようと、皆さんは品質を保ちながら、新たな品種の栽培にも挑戦し続けています。

試行錯誤の連続!高品質を支える細かな気遣い

「仲間がいるから続けられる」と、女性部ならではの温かい協力体制がケイトウ栽培を支えています。栽培は、それぞれの家の畑で行われますが、共同での種まきや現地指導会、出荷目合わせ会などを行い、環境や条件は違えど、互いに情報交換したり、勉強会をしたりすることで、課題を乗り越えてきました。
ケイトウを育てる上で、最も苦労するのが天候です。特に今年は記録的な猛暑。畑を覆うマルチが焼けないよう、寒冷紗(日よけ)をかけるなど、細かな対策が欠かせません。「花の咲く時期がそろわない時や、出荷できる品質にならない時は、やはり辛いですね」と坂田さん。また、寺内さんも、「最初は同じ畑で連作すると良くないと言われ、場所を変えてみたところ、なぜか花が大きくなりすぎて台風で倒れてしまった」という苦い経験もありました。
それでも、JAの営農指導員に相談したり、試行錯誤を重ねたりすることで、問題を乗り越えながら今年で14年目を迎えます。

花の美しさに魅せられ、地域を彩る喜び

ケイトウ栽培を続ける理由を尋ねると「花の色に魅せられて。それだけです」と寺内さんは笑顔で語ります。坂田さんも「花が咲いたら、しばらく見ていられるんです。腰が痛くても、花を見ると癒されますね」と話し、栽培や収穫の大変さがありながらも長年続けてきたことに誇りを感じています。
収穫したケイトウは、出荷の他に、お盆の時期に近所の方におすそ分けしたり、公民館に寄贈したりすることもあるそう。寺内さんは「『お墓にどうぞ』と渡すと、皆さんが生けてくれるのが本当に嬉しくて」と、自分の育てた花で地域を彩ることに喜びを感じています。

品質を守り、未来へつなぐ

現在、定期的に出荷を行う部員は7、8人ほどに減少。しかしJAは地域の農業団体である島根おおち花き部会「しきの会」や個人の生産者にも声をかけ、生産を続けられるよう努力を重ねています。目標は現状維持。「体調が悪いと思ったら無理しないこと」と語る寺内さん。現状を維持していくにはまず、体を大切に、無理せず農業を続けることが何よりも重要だといいます。
高齢化の課題は大きいものの、邑智郡邑南町では「アグサポ隊」という県外から農業研修生を受け入れるなど、若い世代への引き継ぎも行われています。 島根おおちのケイトウは、広島や岡山、そして島根の市場へと出荷されています。これからも、島根おおち女性部が大切に育てた美しいケイトウの花々が、地域の人はもちろん、その花を手にした人々の心を彩り、喜びを届けてくれることでしょう。



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