つながるコラム「絆」 vol.90 出雲市 ・ 神田颯大さん

出雲地区本部

自分に合ったスタイルで農業を続けたい

神田 颯大さん(29歳)

出雲地区本部

ふるさとの出雲で新規就農

 今年で29歳になる若きキュウリ農家・神田颯大さん。新規就農5年目を迎え、年間38トンを出荷しています。出雲市で育った神田さんは、両親は農家ではなく、野菜作りとはあまり縁がない環境で暮らしていました。大田市に住む祖父母は長年キャベツやお米などを生産していますが、「うちはあまり良い立地ではないから継がなくていい」と言われていたそうです。それでも大学進学の際は農学部を選択。「興味がある分野は何かと考えてみて、強いて言えば農業かなと思ったので」と笑いながら振り返ります。
 在学中に現役農家の話を聞き、本格的に就農しようと思うようになった神田さん。果菜類のハウス栽培を目指し、卒業後に出雲市内のキュウリ農家で研修。島根県定住財団に相談しながら土地を探す中で、日照量や水の確保、降雪量が少なく冬場も農業がしやすいこと、流通に乗せるルートなど、神田さんが希望する環境に最も適していたのがふるさとの出雲市でした。

自分も一緒に働く人も、ペースを大切に

 現在神田さんは22アールのビニールハウスで二期作をしています。2月上旬に春作の定植をし、4〜7月上旬に収穫。キュウリの実はタイミングを逃すとあっという間に大きくなり、わずか数時間で規格外のサイズになることも。適した状態を逃さないため、収穫期は一日中ハウスの中を歩き回り、非常に忙しいそうです。「でも成長が早い作物ということは、それだけ植えてから収入になるまでの時間が短いということでもあります。そこがキュウリのいいところの一つですね」と神田さんは話します。  秋作の定植は8月に始まります。「春作から2〜3週ほど期間があきますが、仕事を詰め込まず、土づくりをしながら休暇のつもりでゆったり過ごしています。その時期は週4日ぐらいしかハウスに行かない週も。しっかり働く期間と体を休める期間のメリハリをつけたいタイプなんです」と神田さん。アルバイトの方が子育て中のため、お子さんが長期休みになる間は家族で過ごす時間を大切にしてもらおうという心遣いでもあります。
 しかしゆったり過ごすとはいえ、その期間の土づくりは手間暇のかかる作業。神田さんの農園があるエリアは砂地のため非常に水捌けが良く、湿度を好むキュウリを作るためには継続した土壌改良が必要になります。神田さんは「水を多めに与える必要がありますし、時には肥料が流れてしまうこともあるんです。時間をかけてキュウリに適した土を作っていきたいです」と話します。
 秋作の収穫が終わるのは年末。その後もやはりゆっくり過ごすそうです。春の定植の準備やハウスのメンテナンスなどをしつつ、思い立ったら旅行や近場の温泉などに出掛けてリフレッシュしています。

自分に合ったスタイルで農業を続けたい

 出雲地方のキュウリ農家は、マルチを張った畝に苗を2列植える栽培方法が主流です。神田さんはあえて1列を選択。県外の農家のアドバイスで取り組んでみたところ、1本の苗に手をかけたい神田さんの思いにぴったり合ったそうです。

 2列で定植するとツルが絡んで支え合うため、実が垂れ下がって地面つくことはありません。1列の場合は苗を2方向から挟むようにして紐を張り、実のついたツルを支える必要があります。「その分手間はかかりますが、苗にかかる費用は半分。1列で植えると肥料の吸収率もいいですし、味が良くなる気もします。お客さんに『神田さんのキュウリはおいしい』と言われると嬉しいですね」と神田さんは笑みを浮かべます。

丁寧にキュウリに向き合い、おいしいものを作りたい 

  今後の目標は秀品率の向上。曲がりのない規格に沿ったキュウリにするためには、苗の着果負担を減らす必要があります。最適な実の数は天候、温度、湿度などによっても変わるので、1本1本の様子を見ながら調整しなければいけません。また、水分・肥料の微調整も。毎日キュウリを味見しては試行錯誤しているそうです。神田さんは「大変ですが、いいものを作っていきたいです」と話してくれました。



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