つながるコラム「絆」 vol.74 出雲市湖陵町 ・ 三原雅智さん

出雲地区本部

「西浜いも」の魅力を広く発信し、仲間を増やしたい

三原 雅智さん(26歳)

出雲地区本部

祖父のあとを継ぎ、ふるさとで新規就農

出雲市湖陵町では、日本海に面した砂丘地の地質を生かした農業が行われています。その代表がサツマイモ。湖陵町かんしょ生産組合では「紅はるか」「紅あずま」の2種類を栽培しています。サラサラと柔らかく水はけの良い土地で潮風に吹かれて育つため、甘味が深いのが特徴。「西浜いも」のブランド名で県内外に出荷されています。  三原さんは今年で26歳。生産組合の中で最年少のメンバーです。就農したのは令和4年のこと。三原さんは数年前まで飲食店に勤めていましたが、コロナ禍で売上に打撃を受け、将来を考えるようになったと言います。「地元の湖陵町で祖父が栽培していた『西浜いも』の農家をやろうと思い立ちました」と三原さん。退職してすぐに大田市の島根県立農林大学校に入校。農業の基本を学び「西浜いも」の栽培を始めました。

「西浜いも」作りを断念した農家の畑を活用

 三原さんのおじいさんが所有していた畑は30アールほどで、生計を立てるには厳しい面積。そこで、周囲で離農した人に土地を借りたり譲ってもらったりして、50アールまで作付面積を拡大しました。お孫さんの就農をおじいさんは喜んだかと思いきや「嬉しそうな様子はストレートには見せませんでしたね」と振り返ります。三原さんは「でも、土地探しに協力してくれたり、温度管理をしながら保存できる倉庫を調達してくれたり、全面体にサポートしてくれました。行動で喜びを示してくれていたように思います」と話しました。  収穫量は増えたものの、畑が複数か所にあるため手がかかるのが悩みどころ。「祖父は除草剤を使っていなかったのでならってみましたが、草取りが本当に大変! 抜いても抜いても無限に生えてくるんですよ」と苦笑い。来年に向けて除草対策を検討中です。

面倒見の良い先輩農家たちに支えられる日々

取材時は11月中旬で、収穫期の終盤。1月頃まで調整作業と出荷が続き、2月に入ると育苗が始まります。4月は苗の出荷と畑の土づくり、5~6月は植え付け、夏は除草と、一年を通じて忙しく過ごしています。趣味は自動車で、サーキットでのモータースポーツ観戦やドライブがリフレッシュタイムですが、最近はなかなか時間が取れていないそうです。
 就農をサポートしてくれたおじいさんは病に倒れ、今年はじめに逝去。そのため、現在はほとんどの作業を一人で行っています。三原さんは「もっと一緒に農業をやりたかった。教えてもらいたいことがたくさんあったのに・・・。祖父がいないことが一番の困難かもしれません」と話しました。  就農2年目のルーキーである三原さん。まだわからないことも多く、畑に起こっている小さな異変に気づけないこともあるそう。そんなとき助けてくれるのが生産組合のみなさん。生産組合の集まりで相談に乗ってくれるだけでなく、畑に立ち寄ってアドバイスをしてくれることも多いと言います。三原さんは「農家さんそれぞれ経験に基づいた独自の流儀があるため、多様な意見を吸収して成長していきたいです」と語ります。

「西浜いも」の魅力を広く発信し、仲間を増やしたい

やりがいを感じるのは、形の良い「西浜いも」が収穫できた瞬間。今年は猛暑の影響かやや小ぶりですが、まずまずの出来のようです。JAへの出荷と近隣の飲食店に卸す以外に、町内にある収穫シーズン限定の産直市場「どんとこい市場」でも販売。店内では焼きいもの調理も。焼き立てを食べたお客さんにおいしいと言ってもらえると「農業をやっていてよかった」としみじみ感じるそうです。
 新たに開墾する土地を確保し、来年は70アールに拡大する予定。意欲に燃えつつ「西浜いも」生産の担い手として使命感も抱いています。「湖陵町も他の地域と同様に、農家が年々減っています。離農される方の畑をなるべく引き継いで、西浜いもを絶やさないようにしたいと思っています。一人では難しいので、仲間を増やしたいですね。そのために農業の面白さを発信したいです」と意気込む三原さん。「西浜いも」の、そして湖陵町の農業の広告塔になるべく、市内のイベントや祭りなどにも参加し、魅力をPRしています。



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