つながるコラム「絆」 vol.71 江津市跡市町 ・ 新納英司さん

いわみ中央地区本部

将来は観光農園も!明るい未来を想像して

新納英司さん(49歳)

いわみ中央地区本部

義実家の農園のために県外から移住

江津市の山あいに位置する跡市町。新納さんは奥さんの実家の農地を引き継ぐため、3年前に大分県から移住してきました。江津市にある義実家は長年もち米の生産を続けてきましたが、高齢化により続けていくことが難しいだろうという話が出てきました。数年前、ついに農地を手放そうかという時に、真っ先に動いたのが新納さん。毎年帰省した際には餅作りを手伝っていたこともあり、親しみのあった義実家の状況を聞き「このままなくすのはもったいない」と感じたそう。長年、大分県で看護師として働いていましたが退職し、家業を手伝う決心をしました。

農業を学びシャインマスカットに挑戦

移住当初は、看護師をしながら兼業農家として始めてみようと思っていたそう。ところが、自治会の人に農業大学校に通うことを勧められ、一から勉強することに。「やるからには中途半端な気持ちではなく、自分に投資をしよう」と稲作以外にも挑戦し、専業農家になる気持ちを固めました。
研修を進めていくうちに、もち米と繁忙時期が被らないブドウ栽培が最適だと分かり「シャインマスカット」を選択。使われていない荒れ果てた農地を一人で整備し、今年の春にハウスを建て、苗木を植え付けました。順調にいけば、3年目から収穫ができるようになります。その間にも肥料や水やり、剪定、病害虫の駆除など、やらなければいけないことはたくさんあります。それでも「すごく楽しい」と笑顔で話す新納さん。他の人と競争するのではなく、自分のできる範囲内で責任を持って行う農業を目指し、一生懸命取り組んでいます。

地域の人たちと楽しみながら継続させる

義父に教わりながら取り組んでいるもち米の栽培や加工にも手応えを感じている新納さん。来年からはさらに田んぼを拡大し、餅の出荷数も増やす予定なのだとか。6人のパートさんと一緒に作業を行っており、「地域の方々の雇用ができて、楽しそうに働いておられる姿を見ると良いですよね。皆さんお餅を丸めるのが本当に上手で勉強になります」と、地域の方たちと楽しんで仕事をしています。自分たちだけで運営するのではなく、みんなに手伝ってもらいながらでも"継続させていくこと"に意味があるといいます。新納さんは「一人では絶対できないので、頼れるところは頼っています」と話しました。周囲の人たちとコミュニケーションを取りながら運営してくことも、この先継続できるかどうかに関わってくるのかもしれません。

次世代のために土台を作ることが大切

現在、奥さんと子どもさんたちは大分県で暮らしていますが、下の娘さんが中学校卒業と同時に引っ越してきて一緒に暮らす予定です。新納さんは「小さい頃から餅作りを手伝っていたからか、こっちで農業を『一緒にやりたい!』と言ってくれています」と笑顔を見せ、娘さんと一緒に作業ができる日を心待ちにしています。
新納さんが一人先に江津市で農業を始めようとした際、子どもたちに、なぜ今行くのか、実家の状況や今後の展望をきちんと説明したといいます。
近年の農業離れは何故なのかを追求していくと、もっと稼ぐことができて、魅力ある環境をある程度用意してあげることが必要だと気づいた新納さん。「自分がきちんとした土台を作っていくこと、そして将来的な収支計画を立て、それを伝えていくことが大事なんです」と話します。次の世代が安心して農業ができるように「今できることを」という気持ちで取り組んでいます。

将来は観光農園も!明るい未来を想像して

いわみ中央地区本部管内ではここ5年でブドウの新規栽培者が9人増え、かつてのブドウ産地としての賑わいを取り戻すような勢いで、栽培面積が広がっています。まず、3年後に「シャインマスカット」の収穫が迎えられるよう、技術を習得しながら一つずつ作業をこなしています。「今年の暑さはきついです。管理も難しい」と話す新納さんにとって、温度や水やりの時間帯にも気を遣いながら、木々を大きく強く育てていくことが目下の課題。「でも、自然との勝負はおもしろい。刺激があって良いじゃないですか!」と笑い飛ばします。
今後は餅の加工場に「シャインマスカット」の直売所を新設し、さらに「シャインマスカット」を使った加工品にも挑戦したいと菓子製造業の許可も取得しました。新納さんは「将来的には観光農園を作りたいという夢もあります。地域が盛り上がりますし雇用も生まれる。江津が活性していったら良いなと思っています」と、明るい未来を想像しながら、これからも挑戦し続ける姿に期待が膨らみます。



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