つながるコラム「絆」 vol.68 隠岐の島町 ・ 吉田亮一さん

隠岐地区本部

漁師からシイタケ農家へ! 70歳を過ぎてからの挑戦

吉田 亮一さん(76歳)

隠岐地区本部

漁師からシイタケ農家へ! 70歳を過ぎてからの挑戦

吉田亮一さんのシイタケ農園は、隠岐諸島の島後・隠岐の島町の中心部から約3キロ離れた岬半島にあります。長年漁師として水産業に携わってきた吉田さん。親族に事業を任せシイタケ栽培を始めたのは2018年、70歳を過ぎた頃のことでした。吉田さんは「海のものに長く関わってきたから、次は山のもので隠岐の名物を作りたいという気持ちがあった」と当時を振り返ります。

鳥取県や宮崎県といったシイタケの名産地を視察し、栽培方法を追究。「どうせやるなら一番を目指したい」と山を購入し、自らチェーンソーを持ち農地を切り拓いていきました。

丁寧な整備を続け、シイタケがよく育つ環境を保つ

栽培品種の中心は「菌興115」。農園内に整然と並ぶ原木は全て島内で採取したもの。シイタケ栽培を始めて以降、近隣の山林の持ち主たちから「うちの木を使ってほしい」と声をかけられるようになったそうです。「倒した木が重ならないように調整しながら伐採するのは一苦労」と吉田さん。毎年秋に切り倒し約1か月寝かせます。程良く乾燥した頃合いに約1メートルの長さに切り揃えて植菌。収穫までは1年以上かかります。
農園内は定期的な枝打ちや間伐によって程よい日陰ができ、心地よい風が吹き抜け、シイタケの生育に最適な環境が保たれています。原木の列の間も下草が刈られ歩きやすい状態に。吉田さんは「地域の子どもたちが見学や体験に来るのでこまめに整備しています。スリッパでも歩けますよ」と誇らしそうに語ります。 原木にシイタケの菌がしっかり入って育つよう、湿度の管理も丁寧に行います。農園内にはホースが張り巡らされ、等間隔にスプリンクラーを設置。その日の天候や気温、ホダ木の見た目、触れた時の感覚などで判断し、適宜散水しています。

質の高い干しシイタケを生産 品評会でも高評価

「専門的な勉強はしていないので、シイタケの世話は木の様子を見ながら。ほとんど勘ですよ」と吉田さんは笑いますが、収穫量は年々増加。昨年は約160キロを出荷し、品評会でも毎年高く評価されています。
春と秋の収穫期には1本の原木に30個近くのシイタケがつきます。吉田さんと従業員だけでは作業が追い付かないため、近隣の人に応援をお願いしています。「農業などで助けが必要なときは私も手伝いに行きます。行けないときはお酒などを差し入れたり、持ちつ持たれつの〝手間返し〟ですね」と話す吉田さん。
農園内には乾燥機など干しシイタケに加工するための設備も。質の良いものは乾燥させるとカサのスジがくっきりと出て、食材としての価値が高まります。吉田さんの干しシイタケは香りが強く食べ応えがあると評判。近年は燃料費の高騰に悩まされていますが、「シイタケを隠岐の特産品にしたい」との思いで生産を続けています。

次の世代へバトンを渡すため、若者たちに体験を

農園内では養蜂も展開。シイタケは無農薬で栽培できるため、ミツバチの健康を害することがありません。今年はシイタケのハウス栽培も実験的にスタート。多様な挑戦を続けています。
また、シイタケ栽培を若い世代に受け継いでもらうため、見学や体験を積極的に受け入れています。昨年は隠岐高校からの依頼で植菌の体験を行いました。栽培に興味をもった生徒も多く、「またやりたい!次はいつ来ていいですか?」とせがまれたそう。原木は学校に持ち帰ってもらい、設置場所や保湿など栽培方法を指導。収穫後には生徒たちが試食会に招待してくれました。「焼きものやフライにしてふるまってくれて、本当にうれしかったです」と吉田さんは満面の笑顔。
吉田さんは生産の継承だけでなく6次化も重要視しており、「特産品として広めるためには新しい商品づくりが必要。JAと協力しアイデアを形にしていきたい」と意欲を燃やしていました。

吉田さんおすすめの食べ方

生のシイタケを丸ごと焼いて醤油やバターで食べるのが吉田さんのお気に入り。ベストは炭火なのだとか...!これからの季節はバーベキューの一品にぜひ。また、吉田さんの自宅では、広口の瓶に干しシイタケを水とともに入れて冷蔵庫に常備。その出汁を料理に使うと味がワンランクアップ!戻したシイタケは炒め物や煮物などに活用しています。



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