つながるコラム「絆」 vol.64 邑智郡美郷町・ 烏田正輝さん

島根おおち地区本部

中山間地の農業と暮らしを守る

烏田正輝さん(65歳)

島根おおち地区本部

中山間地の農業と暮らしを守る

邑智郡美郷町は島根県のほぼ中央にある山あいの町。水稲を中心に、そば、ミニトマト、 菌床シイタケなどが生産されている中、白ねぎも盛んに栽培されている作物の一つです。島根おおち地区本部管内は、白ねぎ栽培に約30年の実績があり、作付け面積は県内最大の約11.5ha。県内の白ねぎ産地のリーダーとして牽引しています。
 美郷町久保にある「ファームサポート美郷」は、後継者不足で離農が加速する中山間地の農地管理・活用を目的に2018年に設立されました。集落営農組合がカバーできない遊休地を借り受け、白ねぎだけでなく、玉ねぎ、そば、キャベツのほか多様な作物を栽培。次世代の育成にも注力し、新規就農を希望する地域おこし協力隊や、技能実習生の受け入れも。地域の農業と食、農村の維持と発展に貢献しています。以前は同町の職員として設立に携わっていた烏田さん。現在は同町の会計年度職員と、法人の理事として活躍されています。

年末から年始にかけてが出荷シーズン

11月から1月にかけては白ねぎの収穫・出荷の最盛期。霜が降りる日は収穫作業ができませんが、寒さが増すこの時期、冷え込むほどに糖度がグッと上がり、濃く深い甘みの白ねぎになるのだとか。採れたては水分たっぷりで、爽やかな甘い香りが出荷場に広がります。
 ファームサポート美郷で栽培している品種は「項羽一本太」「関羽一本太」「ホワイトスター」など。中でも2022年度から導入した「項羽一本太」は、形が美しく、緑と白のコントラストが鮮やか。病気にも比較的強く育てやすい点もポイントです。「よく育ち、一大産地に引けを取りません。来年度も期待しています」と烏田さんは満足の笑顔を見せてくれました。

作業と時間を丁寧に重ね、甘く太いネギを育む

「白ねぎは栽培期間が1年近くあり、手が掛かる作物です」と烏田さん。特に手間がかかるのがネギに土をかぶせて盛る「土寄せ」。定植から収穫期まで何度も行います。青々と伸びたネギに土寄せをすると、土中の部分が1ヶ月ほどかけて白く太く育っていきます。JAしまねの規格は軟白30㎝。他産地より、さらに高く土寄せをする必要があり、烏田さんたちは品質の高い白ねぎを育てるための気遣いを欠かしません。

 除草作業も春から秋まで絶え間なく続きます。圃場内には除草剤が使えず、みんなで除草作業をしなければいけない箇所もあります。人手不足で雑草の生育に作業が追いつかず、収穫を諦めざるを得ないエリアが発生したこともあったとか。「防除も大変です。葉が水分を弾くので、上から散布するだけではダメ。一本一本包み込むように薬剤をかけてやらないといけません。専用の機械を導入したのでかなり楽になりましたが...」と苦労を語りますが、その分収穫期の感慨はひとしおだそうです。


技能実習生との交流が息抜きに

美郷町はインドネシアのバリ島にあるマス村と友好姉妹都市協定を結んでいます。烏田さんは以前から町の職員として交流事業に参加し、インドネシア語が堪能。バリ島出身の技能実習生たちとのコミュニケーションもスムーズで、笑顔で会話が弾みます。そんな烏田さんはインドネシア料理が大好物。実習生が時々ごちそうしてくれる本場の味を楽しみにしているそうです。「バビグリンという豚の丸焼き料理を作りたいと言われたので、小さめのイノシシを手に入れて一緒にチャレンジしようと思っています」と烏田さん。楽しい交流は現場の活気にもつながっているようです。

適切な作付け面積で持続可能な生産を

今後の課題は生産量の調整と話す烏田さん。「今の人員で可能な出荷作業のキャパシティに合い、かつ効率よく単価が高いものを作れる最適な面積が、4~5年栽培してようやく見えてきました」と話します。一方で、地域からの農地活用のニーズは高まっているので、そばなど他の作物とバランスをとりながら、持続可能な農業を模索していきたいそうです。  農地を守り、住民の暮らしを支えていくため、頼もしい仲間とともに烏田さんの挑戦は続きます。



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