つながるコラム「絆」 vol.61 浜田市・ 清水祐貴さん
清水祐貴さん(37歳)
いわみ中央地区本部
様々な経験を通して
周囲を山々に囲まれた浜田市金城町。TC浜田農場株式会社は浜田市の誘致事業として2017年に設立されました。この豊かな自然の中、東京ドーム1個分の敷地で、特許技術(TC21-養液栽培システム)を取り入れ約55,000本のトマトを栽培しています。会社全体の管理を行う清水さん。東京で育ち、神奈川県のスポーツ専攻のある高校に進学。寮生活を送りながらサッカーに打ち込む毎日でした。大学中退後は、サッカーの指導者ライセンスを取得し、情報系の資格も独学で取得しながら、母校でサッカーチームの指導者として活動を開始。トップチームの指導者として国内外で培ってきた経験を活かし、その後は様々な会社で売上の向上や社員のモチベーション維持など人材マネージメントに特化したコンサルティングを行ってきました。
農業との出会いと浜田への移住
農業に初めて出会ったのは、富山県で酪農の仕事に誘われた30歳の時。そこで農業の厳しさを目の当たりにします。2年の契約期間を終えたところで、大学時代の友人だったTC浜田農場の野村広祐農場長に誘われ、浜田市にIターン。トマトに関することは一から勉強し、20棟ものハウスを有する大規模農場のトマト栽培をはじめ、今までの豊富な知識や経験をもとに、会社経営や人材育成など様々な管理を担っています。
作業効率だけを考えないやり方
TC浜田農場はもともと、長野県塩尻市で大玉トマトを生産していましたが、長野とは違い、日照時間が少ない日本海側での大規模なトマト栽培は難しく、大きな課題もたくさん見えてきています。その中でも手強いのが、冬の湿気。湿気によりカビが発生し、木がどんどん腐っていくことで木を切り落とさなければなりません。清水さんは「2作型にすることで冬の暖房費を抑えられる」と、今年から作型の変更を提案。今まで7月の定植後は1年間そのまま収穫する方法で進めていましたが、1月に一旦すべての木を切り、暖房費のコストカットを実現しました。作業効率だけではなく、年間収支とのバランスも考えながら作業を進めるのも清水さんのやり方の一つです。
農業は忙しいという概念を崩す
現在、TC浜田農場には正社員6名、パート24名が働いています。今まで人材マネージメントを専門に経験を積んできた清水さんが意識しているのが、QOW(クオリティ オブ ワーク)とQOL(クオリティ オブ ライフ)の密接な関係性。どうしたら従業員が仕事に対するモチベーションを維持できるかを考え、どのように従業員に伝えるといいかを常に考えています。
最終的に従業員自身が仕事へのやりがいを通じてQOLを上げていくことにつなげていきます。その中で、どうしても「農業は忙しい」という概念が習慣化されている現状から、その考えを捨てるため、残業をしない業務体系に切り替えたり、休憩は自由制にしたりと従業員自身の意識改革にも取り組んできました。その結果、従業員が自ら考え行動していくことにつながり、業績にも反映されていると話します。
常に80%の力で仕事をする
例えば、今日割り当てられている誘引の作業が早く終わったので、もう1棟分作業をしてしまうと、数週間後に行う収穫作業の量もその分増えてしまいます。いざ収穫する日に、何かトラブルが起こってしまったり、従業員が休んでしまったりと思わぬ事態が発生した場合、作業を円滑に進めていくことはできません。だからこそ「いつも決まったペースで仕事をすることが大切」と従業員に伝え続けています。 さらに「常に80%の力で仕事をしながら、頭では100%の力でどうしたら効率良く仕事ができるかを考えてほしい」とも。体力を維持しながらも能力は向上することが可能になってきます。 コンスタントに仕事をすることで、コンスタントに休みが取れ、常に安定した気持ちで作業に向き合えるので、会社の居心地も良くなり、従業員から自然と「もう少しこうしたらいいんじゃないですか?」という意見も出てくるようになったそう。清水さんは「従業員が失敗しながら成長していく姿を見守っていけることが何より嬉しい」と笑顔を見せます。
何にでも興味を持つ清水さんは趣味も多い
そんな清水さん、休日には登山やスキーなどアウトドアに出かけたりするそう。カメラにも挑戦していて、農場のHPに掲載されている星空の写真は清水さんが撮影したものなのだとか。他にも読書やロードバイクなど、多くのことにアンテナを張っています。
新たな視点から挑戦する農業
企業が農業に参入することで、作業のデジタル化をはじめ、経営方法や人材マネージメントなど、新たな視点から捉えることができるようになりました。厳しいイメージの農業を誰でも活躍できる環境に変えていきたいというビジョンを持つ清水さん。パート従業員の就労時間を決めるのではなく、可能な範囲で自由にすることで人材の確保につながりました。また、人員を適材適所に配置することで、その人に合った分野を伸ばし仕事のやりがいを見出していくことも実行できています。今後も再現性の高いスタイルを目指しながら、美味しいトマト作りに励む清水さん。従業員とともに新たな農業への挑戦が続きます。