つながるコラム「絆」 vol.59 西ノ島町・小西富夫さん

隠岐どうぜん地区本部

新しいものに挑戦し続けたい

小西富夫さん(69歳)

隠岐どうぜん地区本部

年間を通して様々な野菜づくりを

豊かな自然に囲まれた隠岐諸島のひとつ、西ノ島町。小西さんは長年、西ノ島町役場の職員として勤務する傍ら、家庭菜園で野菜作りを楽しんでいました。最初は3アールほどの面積でしたが、近所の空き家の土地管理を任されるようになり、今では自宅周辺に数カ所、計15アールの畑を1人で管理しています。61歳から農業中心の生活となり、春は玉ねぎ、夏はズッキーニ・キュウリ、秋は春菊・ネギ、冬はあすっこ・大根など、JAの直売コーナーには年間を通して小西さんの野菜が並んでいます。

地元の野菜が食べられる喜び

西ノ島町は元々、火山島であったことから平地が少ない地形が特徴で、耕作地として発展することは難しい地域です。昔は隠岐地方独自の「牧畑」と呼ばれる輪転式農法が盛んでしたが、戦後には消滅し、今では和牛の放牧繁殖以外の本格的な農業は行われていません。そうした背景からも、島に流通する野菜や米は町外から仕入れたものがほとんど。お店に並ぶ商品は輸送コストがかかるため、どうしても本土に比べ価格が高くなってしまいます。家庭菜園をしている人も多く見られますが、浦郷地区など漁業が中心の集落には畑自体がない家庭もあり、また、自分で作ることが難しくなった高齢者など、お店で購入せざるを得ない人も増えているのが現状です。
そんな中、直売コーナーには地元の人が作った野菜や、山で採れた山菜などが並び、多くの人の支えとなっています。野菜を安価で購入できるということはもちろん、作り手の顔が見える安心感、旬のものを食べられる喜び、そして何より、新鮮なものを食べられること。島の人にとって、直売所の野菜は色々な意味で価値あるものとなっています。そんな直売部会の会長を長年務めている小西さんは「もっと若い人にも野菜を作ってもらって、一緒に売り場を盛り上げていけたら」と、次の世代の人たちが参加することにも期待を寄せています。

島では珍しかったズッキーニ



小西さんが3年前から栽培を始めたズッキーニ。それまでは島でほとんど流通しない珍しい野菜だったそう。「数年前に一度、島の店で見かけた時に1本300円で販売されていた」という驚きからも、育てることに益々興味を持ったと言います。「最近はテレビの料理番組でも多く取り上げられるようになり、昨年は多くの方が買ってくれました」と手応えを感じている様子。そうは言っても、いまだに島の人からは「どうやって食べるの?」「食べ方を教えてほしい」と聞かれることが多く、小西さんはおすすめの食べ方のひとつである「ニンニクと野菜のオリーブオイル炒め」や「天ぷら」をはじめ、どんな調理法でも美味しく食べられることを伝えているそうです。
現在でも島外から仕入れされることも少ないズッキーニですが、こうして島の人たちが簡単に手に入れられるのは、小西さんが一生懸命新しい品目の栽培に取り組んでいるからこそ。直売所に出荷した野菜を「買ったよ」と声をかけられることも多くなり、小西さんにとっては新たな挑戦への原動力となっているそうです。

かわいい孫のためにも

休日になると同じ町内に住むお孫さんが遊びに来て、畑にできたものを一緒に収穫することも多いとのこと。この間まではイチゴを摘むことができ、お孫さんはそれをとても楽しみにしていたそうです。「今年は天気が良かったので、ザルいっぱいに採れることもありました」と笑顔を見せます。これからの季節はミニトマトの収穫が始まるので、かわいいお孫さんの喜ぶ姿を見るためにも、より一層畑の管理に勤しんでいます。

新しいものに挑戦し続けたい

今まで作ったことのない新しい品目にも、次々とチャレンジしている小西さん。種や苗を島外から取り寄せ、育ててみては直売所に出荷しています。今年は白ゴーヤと白ナスの栽培を始めたそうで、「毎年1年生だけど、おもしろそうなものを探しながら少しずつやっています」と話します。低い位置での草取りや、夏の暑い時期の作業は体がきつく感じることもありますが、本やインターネット、最近ではユーチューブで育て方を研究し、年々品質の良いものが収穫できるよう努力も欠かしません。「今後も島の人たちに新鮮な野菜を安定的に、目新しいものを安く供給できるように」と、意欲的に野菜作りに取り組んでいる小西さんでした。



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