つながるコラム「絆」 vol.56 松江市・宮廻拓弥さん
宮廻拓弥さん(31才)
くにびき地区本部
身近にあった農業が職業に
山陰自動車道東出雲IC(インターチェンジ)から北へ、しばらくすると視界に広大な農地が広がりま す。その中に、約2.4ヘクタールの宮廻さんのキャベツ畑はあります。実家もハウスでの野菜栽培などを営まれ、宮廻さんも知り合いのもとで農業研修を受けるなど、「身近に農業があった」と話します。島根県、松江市、JAが生産者の高齢化や生産量の伸び悩み対策として、新規就農者の育成のため開講している「だんだん営農塾」に参加することを決め、農業を職とするため、さまざまな実習を受けました。宮廻さんは、基本的なキャベツ栽培の知識や技術を学び、その内容を確実に進捗することが大切だと考えています
県内一のキャベツ生産拠点
中海干拓農地は平成元年に造成され、キャベツの生産を開始。平成3年には、宮廻さんも加入している、 松江・八束くにびきキャベツ部会が設立されます。現在、会員数は48名、出荷量は加工用も合わせると年間約1,000トン。島根県で生産されるキャベツの半数以上にもなります。
「美味しまね認証」を団体取得しており、部会員の産地としての認識も高まり、ルール化で農作業の安全性と効率化が図られています。キャベツ栽培は夏スタート
キャベツは、長い期間収穫することができます。宮廻さんが栽培するのは、「おきな」「松波」「金剛」「夢舞台」「夢舞妓」の5種類。全て秋冬採りの品種ですが、収穫時期が異なるため11月~4月まで出荷することができます。夏場の定植に始まり施肥、防除を行います。「収穫量を増やすためには、定植したキャベツを減らさないこと、一つの玉を太らせること。そのためには施肥、防除はとても大切」と宮廻さん。防除には、環境への影響がないフェロモン剤(コナガコン)を使用しています。直接的な殺虫効果はないが、事前に使用することで害虫の発生を防ぐ効果があり、農薬の使用も減らすことができます。
長く続く出荷作業
早いものは11月から出荷が始まり、年を越し4月まで続きます。「適切な時期に、市場の需要の高いサイズを出荷することに集中している」と宮廻さん。1.4㎏が目安で、あまり大きなものは加工用として出荷します。キャベツは、一つ一つ丁寧に包丁で収穫し、土や汚れが付かないよう作業場へ運びます。作業場では直ちに、外葉を剥がし、他のキャベツを傷つけないよう芯をカットします。サイズ別に選別し、今年から使用している島根県統一の専用段ボールに詰めて干拓地内の集荷場へ出荷します。冬場の冷たく強い風が作業の進度を遅れさせますが、「降雪が一番大変。キャベツを掘り起こし、畑に入るにも一苦労。今年は雪が少なくて良かった」と苦笑します。
今は農業中心
就農から4年、キャベツ作りは試行錯誤の続く宮廻さん。キャベツ栽培の空く春から夏にかけては、カボチャを栽培しています。収入の安定と、土地の有効利用のためこちらも手が抜けません。自分で決めた休日には、好きなアクションゲームでリフレッシュします。それでも、キャベツの収穫量を増やすことが頭の中から離れないそう。しかし、作業をほぼ一人で行っているため、難しいことも多いとか。早く余暇を楽しめるようになるためにも、キャベツ栽培に向き合います。1年1作なので農業の勉強には時間がかかります。「チャンスは年1回だけ!」。経験を重ね、一歩ずつ着実に前に進む宮廻さんでした。