つながるコラム「絆」 vol.53 出雲市大島町・石飛政樹さん

出雲地区本部

甘くて柔らかい白ねぎでブランド化を目指す

石飛政樹さん(46才)

出雲地区本部

甘くて柔らかい白ねぎでブランド化を目指す

出雲市の西側にある神西(じんざい)地区。砂地という好条件を活かし、古くより白ねぎの生産が盛んな地域です。代々農家を営んできた石飛家でも、以前から白ねぎを生産してきました。この地区で作られたものは「神西ねぎ」という名で販売されていましたが、当時は生産者ごとに様々な品種を栽培していたため、統一が図れておらず、また白ねぎは価格が安定しにくいため、農家としても手立てを考える必要がありました。そこで石飛さんはJAに相談。皆が同じ品種を栽培し、新たなブランド化を目指し動き始めることに。いくつかの試験栽培を行い、甘みが強く柔らかい品種を選びました。石飛さんは「普通の白ねぎとは一番かけ離れているものが良かった。その方が差別化も図れ、ブランドとしても確立しやすかった」と振り返ります。こうして、平成19年から本格的な作付けを開始し、出雲大社に神々が集まる旧暦の「神在月(10月)」に収穫が可能になることから「出雲神在ねぎ」と名付け、売り出すことになりました。

繊細でデリケートな白ねぎ

神在ねぎは、甘くて柔らかく全部美味しく食べられることから、葉をつけた状態で出荷・販売されます。葉まで柔らかいことが特長ですが、それ故に繊細でもあり、育てることがとても難しい作物です。そのため、収穫も茎葉を傷つけないように丁寧に手で行います。また、袋詰めの際も、葉が折れないように慎重に入れるなど、最後まで気を遣う作業が続きます。病気に弱く、害虫もつきやすい上に、大雨などで水に浸かってしまった場合は腐ったり折れやすくなります。それらの問題にも頭を悩まされてきたという石飛さん。令和3年の夏は2回も豪雨に襲われた出雲地方。石飛さんの畑も約半分が被害に遭いました。石飛さんは「通常より早い時期に植えて、梅雨〜夏の大雨が降りそうな時期までにある程度の大きさに成長させておくなどの対策が必要」と、今後に向けあらゆる予防策を模索しています。

この美味しさをもっともっと広めたい

こうして手間ひまをかけ大事に扱ってきたからこそ「良いものができた時は格別に嬉しい」と笑顔で話す石飛さん。「もっと欲しいと言われると、こちらも張り切ります!」と、需要がある時が一番やる気が出ます。暖冬などの理由から、家庭で鍋料理をしなくなると、白ねぎの出荷がストップされることも。白ねぎの美味しい季節になって、たくさんの人に食べてもらいたいと願っています。

キャンプでリフレッシュ

時間があればキャンプに行き、息抜きをしている石飛さん。お子さんたちが小さい頃は、家族でよく行っていたそうですが、今は大きくなり一緒に行く機会は減ってしまったそうです。しかし、周りにはキャンプ好きな友人が多く、集まることも。その日の収穫が終わり次第出掛けることもあり「作業終わりのお酒は格別に美味しい」と笑顔をみせます。冬場であっても市内のキャンプ場にしょっちゅう足を運んで大きめのテントの中でストーブを焚き、お鍋とお酒を楽しんでいます。仲間とともにワイワイお酒を飲むことが、石飛さんにとって最高のリフレッシュタイムなのだとか。

作業を組み立てることがおもしろい

以前から神西地区のほとんどの農家は、ハウス栽培と露地栽培を組み合わせながら、それぞれに合った作物やスタイルを選び一年を通して仕事をしています。石飛さんもその一人で、年間で様々な作物を栽培しています。「一年の作業を組み立てることはすごく大変だけど、おもしろい」と語る石飛さん。きちんと仕事を組み立てていくことで、今までと同じ面積でも仕事量が増え、収入にも反映される農業のおもしろさを感じています。また、それに伴って人手確保や今後の課題も見えてきたと言います。昨年から一人雇用し、今後は家族経営ではない継承の方法も視野に入れています。「神在ねぎの知名度はまだまだ。もっと多くの人に知ってもらい食べてもらいたい」と今後の意気込みを語る石飛さん。今よりさらに農業をおもしろく、そして効率的な農業を目指し、石飛さんの挑戦は続きます。



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