つながるコラム「絆」 vol.49 斐川町・坪内 雅さん

斐川地区本部

あらゆるチャンスとご縁を大切に

坪内 雅さん(36才)

斐川地区本部

ご縁を繋ぐぶどう

広大な田園風景が続く斐川平野の西側に幾棟も連なるビニールハウス。坪内さんはここの一部を借りて、シャインマスカットやデラウェアなどのぶどう栽培を行なっています。大学卒業後、地元の出雲でサラリーマンとして働いていましたが、小さい頃から自然が好きだったという坪内さんは、ずっと興味のあった農業をやるために30歳の時に退職。出雲市主催のアグリビジネススクールでぶどう栽培について学び、斐川町ぶどう生産組合の矢野恵司組合長のもとでの研修で実践力を身に付け、2017年に念願のぶどう農園を開き独立を果たしました。付けた名前は「えんまん葡萄farm」。"円満"という意味もありますが、出雲の地ならではの"ご縁"という意味も含まれ「ぶどうを通じて関わるすべての方に良いご縁がありますように」との願いも込められました。

農業の楽しさと厳しさを実感

いざ、農業を始めてみて思うのは、とにかく「楽しい」ということ。自分が作ったぶどうを食べた人の反応を見たり、感想を聞くのが嬉しい瞬間。反面、シャインマスカットは品質が重要で、糖度はもちろん、粒の大きさや房が整然と並んでいるかなど見た目によって値段が決まり、農業経営の厳しさも痛感。育成の段階で手をかけた分だけ高単価で売れるということ。「どうしたらもっと高単価で売れるようになるか」と坪内さんは現状に満足せず、常に上を目指して生産に取り組んでいます。

作業バランスが重要

現在、シャインマスカット18aと、デラウェア10aを一人で管理する坪内さん。どうしても、多くの作業が同じ時期に重なってしまうことも。「すべてに100%の力を注ぐというわけにはいかないので、省略できる部分などを見極めて作業を行なっている。その中でいかに高品質のものを作るか重要」と話します。「決められた作業は必ずやる。そこは絶対に怠らない」と信念を貫きます。広大な敷地を一人で管理しているからこそ、限られた時間内でどこに力を注ぐべきかバランスが重要になってきます。

農家になってよかった

私生活では2児の父親でもある坪内さん。サラリーマン時代は帰りが遅く、子どもと過ごす時間も少なかったが、現在は時間の融通が効くようになり、習い事の送り迎えもできるようになりました。子どもたちの成長を身近に感じられると満足な様子。年に一度は家族でキャンプに出かけるのが恒例となり、昨年行った三瓶山は良い思い出と振り返ります。。

また、最近はデジタルスチルカメラで写真を撮ることにもはまっていて、常にカメラは作業場にも置いています。特に珍しい鳥や美しい風景に出会った時には、すかさずシャッターを切ります「農業をしていると良い景色に出会うことが多い」と話す坪内さん。就農したことで、私生活にも大きく影響しているようです。

様々な方法で情報発信!

坪内さんはブログやSNSで情報を発信しています。ただぶどうを多くの人に知ってもらうだけではなく「どんな人が、どうやって作っているのだろう?」と思われた時に、すぐに示せるものがあればいいなという思いから始めました。どんな思いで作っているか、どんな作業をしながら育てているか、農薬をどのくらい使っているかなど日記のように綴ることで、安心感を与えます。
また、昨年の夏から地元の子どもたちを対象にした「巨峰収穫体験」をぶどう生産組合の青年部で行なっています。坪内さんは「美味しかったら、子どもたちはきっと『また食べたい』という気持ちになってくれるし、スーパーで見かけた時に買ってもらいやすい。農家として嬉しいこと」と語ります。

あらゆるチャンスとご縁を大切に

就農して今年で5年目。やっと普通に生活できるようになったと胸を撫で下ろす坪内さん。「常にアンテナを張り、チャンスがあった時すぐに対応できるよう準備しておきたい」と話します。今後は作業農家になってよかった場の余ったスペースで直売所を開いたり、今試験的に行なっている干しブドウの加工を本格始動させたりなど、様々なことにチャレンジしていきたいそうです。「ここからいかに発展していけるか。まずは、しっかりとぶどうの収穫をして利益を上げることを考え、これなら大丈夫というくらいの確信に繋げていきたい」とあらゆる可能性に期待を膨らませ、その時その時のご縁を大切にしながら、しっかりとぶどうに向き合う坪内さんでした。



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