つながるコラム「絆」 vol.47 大田市 竹下 靖洋さん

石見銀山地区本部

地元はもちろん、全国にも美味しい玉子を届けたい

有限会社旭養鶏舎 代表取締役社長

竹下 靖洋さん(45才)

石見銀山地区本部

飼料へのこだわり

大田市波根町にある有限会社旭養鶏舎は、今年で60期を迎える長い歴史を持つ養鶏場です。現在33万羽の鶏を飼育し、1日当たり24万〜26万個の玉子を出荷しています。
旭養鶏舎がこだわっているのは、鶏に与える飼料。安全で美味しい卵を産んでもらうため、まずは鶏を健康に育てるということに重点を置いています。
主力商品である「ネッカエッグ」は、飼料にネッカリッチ(木酢酸混合飼料)と海藻を与えて育った鶏から産まれた「たまご」。

それをベースに、えごまや飼料米など地元で収穫した栄養満点の飼料を加えて与えた「えごま玉子」や「こめたまご」など数種類のラインナップがあり、島根県内外に出荷しています。中でも県内への出荷数は全体の7割を占め、そこには、竹下社長、そして会長(前・社長)である竹下正幸さんの「まずは地元・島根県の皆さんへ安定的に玉子を供給したい」という強い思いが込められています。

安心・安全のため積極的に機械を導入

ひよこの育成から採卵、洗卵、パック詰め、出荷まで一連の作業を全て担う旭養鶏舎では、衛生的かつ安全に作業を進めるため、かなり早い時期から最先端の設備を導入しています。例えば、水やエサやりはもちろん、鶏舎の空調管理やどこで卵が産まれたかなど細かい作業に至るまで機械化され、今では鶏の糞の処理までボタン操作で可能になっています。汚れる仕事だからこそきっちりと設備投資をして、なるべく手を煩わせることなく作業を行えるようにと衛生面への配慮も徹底されています。また、日本で初めてAI技術を使い、卵を取り出す機械を導入。人工知能を駆使して更なる効率化を図っています。「パック詰めまでほぼ全ての作業が機械なので、実はいちばん最初に玉子を触るのはお客様なんです」と話す竹下社長。ミスなく安全なものを届けられることによって、より顧客の信頼に繋がっています。

6次産業化への取り組み

平成26年に、かねてから念願だった鶏卵加工品の加工・直売所を自社内に設立。玉子とうふ、厚焼き玉子、茶わんむしなどの惣菜品に加え、プリンやアイスなどの洋菓子の販売を開始しました。当初、惣菜商品はスーパーでの売り出し用のみの製造でしたが、最近ではお弁当屋さんや惣菜屋さんなどにも提供し、それぞれの店によって味や焼き目などを変え顧客の細かい要望に応じています。
また、今年から洋菓子の製造に力を入れるため設備を増やし、ロールケーキやチーズタルトなどの新商品を次々と開発。販売当初から、すでに人気商品であったプリンも今回ブランド化に際して品質改良。さらに外部発注されていたシュークリームの皮も自社で製造できるようにしました。それらを新ブランド「ヴァーグあさひ」として売り出し、今後もより一層販売を強化していく計画です。

働きやすい環境づくり

養鶏業といえば、休みがないというイメージかもしれません。そんな中、旭養鶏舎では週休2日制の導入や福利厚生の充実など、従業員のワークライフバランスに気を配りながら働きやすい環境づくりを心がけています。また、前述のようにできるだけ多くの手作業を機械化することで、生産性の向上、ミスの減少、人手不足などをカバーし、それが従業員のモチベーション維持にも繋がっています。
現在、従業員は60名。「いかに長く続けて働いてもらえるかということを考えています」と竹下社長は常に従業員の気持ちに寄り添う姿勢を欠かしません。 そんな竹下社長に趣味をお尋ねすると、唯一の趣味だったという「息子たちの野球観戦」は大学進学とともに終了。「今はゴルフと言いたいところですが、付き合い程度で趣味ではないですね。やっぱり今は仕事が一番!」とキッパリ。自ら畜産関連学部に進学されたという息子さんらと、ゴルフが楽しめるようになれればと、将来の姿についても笑顔でお話しいただきました。

地元はもちろん、全国にも美味しい玉子を届けたい

大田市は県外への出荷ルートが確保しにくい立地ですが、それを逆手に取り、島根県内への供給に力を注ぐ旭養鶏舎。県内の他の養鶏場とも連携し、「まずは地元の方に美味しい玉子を食べてもらえるよう、従業員一同思いをひとつにして一生懸命取り組んでいます」と語る竹下社長。今後は県外への出荷拡大も視野に、新しくブランド化された洋菓子をはじめ、まだまだ伸び代があるという6次産業化の新たな商品開発や販売など、竹下社長の挑戦は続きます。



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