つながるコラム「絆」 vol.45 奥出雲町 和泉 英富さん・宏幸さん

雲南地区本部

「脈々と受け継がれる奥出雲ブランド

和泉畜産 
和泉 英富さん(64才)、宏幸さん(33才)

雲南地区本部

親子二人三脚

奥出雲町は水、土壌ともに豊かで、古くから和牛生産が盛んな地域。中でも和泉さん親子が経営する 和泉畜産は管内でも数少ない、繁殖から肥育までの一貫経営を行う大規模農場です。 英富さんは、約35年前に先代からこの農場を引き継ぎ、現在では奥出雲町和牛改良組合の組合長も務 められ、培ってきた知識と経験を後進に継いでいます。当時は繁殖だけを行なっていましたが、平成12年から肥育も始め一貫経営にシフト。現在は息子の宏幸さんと2人で、繁殖牛58頭、肥育牛75頭を飼育し、年間40頭ほどの肥育牛を出荷しています。

脈々と受け継がれる奥出雲ブランド

雲南地域では古くから農家が和牛を農作業用の役牛として飼養していました。そのため、丈夫な牛が改良され、地域をあげて現在のブランド牛にまで育てられました。2020年10月には特許庁の「地域名」と「商品(サービス)名」からなる地域ブランドを保護する地域団体商標制度に「奥出雲和牛」が登録されました。また、ふるさと納税の返礼品として取り扱いが始まると、納税額も過去最多を記録。「名実ともに奥出雲地方を代表するブランド品として地域の牽引役になりつある」と英富さんは誇らしげに話します。この地で生まれた子牛を、この地で育てるのが「奥出雲和牛」。和泉さんの農場では、一貫経営のメリットを活かし、個体の特性を見極め、子牛の頃からしっかりと腹づくりを行うことで約28ヶ月の肥育期間に十分な飼料を摂取できる丈夫な体をつくり、美味しい和牛に育てます。
また、その子牛を生む母牛も水や牧草など、奥出雲の恵まれた環境の中で放牧することで、足腰が強く、分娩が容易になるそうです。

次代を見据えた設備投資



子牛を増やそうと取り組んだ時期がありましたが、個体管理が思うようにいかず、子牛を数頭亡くしてしまうということもあったと、真剣な眼差しで話す和泉さん親子。過去の失敗から学び、約5年前に「温度センサー(牛温恵)」や「人工哺育設備」などを導入。また人工哺育房も設置し、換気や温度管理、衛生面など子牛管理を大幅に見直したそうです。
出産前の母牛に温度センサーを取り付け、母体の体温変化を検知し、牛舎にいなくても分娩兆候(破水、出産)といった状態を知ることができるようシステム化。誕生から一週間程度で子牛を哺育房に移動させ、約3カ月間過ごします。ミルクメーカーも導入し、より丈夫な子牛生産を、より効率的にできるよう試行錯誤を繰り返します。「分娩房に設置した監視カメラと合わせて、精度高く母体の状態を把握でき、管理が飛躍的に楽になりました」と宏幸さんは笑顔で話します。

息抜きも大事

「牛飼いの辛いところは、飼育管理が365日」と冗談交じりに話す英富さん。そんな英富さんの趣味は「釣り」。年に3・4回、仲間と瀬戸内海沖に船で出るという本格派。もっと行きたいけど、仲間内で作業を手伝ってもらったり手伝ったり、時にはヘルパー制度なども活用し、やりくりをしているのが現実。息子の宏幸さんは「親父が釣りに5回でも6回でも出かけられるよう、法人化を含めた体制の強化などが必要」と話します。


奥出雲和牛への想いを馳せて!

後継者や新規就農者を育てる意味でも「体力勝負ではなく、効率的な体制や環境づくりが重要」とこれからの課題も話します。畜産団地や大規模化、見据える「奥出雲和牛」の果てない夢を親子で語り合うことも少なくないそうです。

「うちから出る和牛肉には絶対の自信がある」と口を揃える和泉親子。だからこそ「奥出雲和牛」をもっと育て、もっと広めたい。自信と誇りを胸に親子の奮闘はまだまだ続きます。



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