つながるコラム「絆」 vol.43 出雲市斐川町・こだわりの米粉と小麦粉

斐川地区本部

〝面白い〟という夢に向かって

出雲市斐川町・こだわりの米粉と小麦粉

斐川地区本部 
農事組合法人アグリード羽根組合長 黒田幸司さん

山間の長閑な田園風景の一角にある「食創工房 レコルト」は、斐川平野の南端に位置する出雲市斐川町羽根地区にあります。地域の公民館であった建物を改装した店舗兼加工場は、香ばしい香りと甘い香りが漂い、風景に馴んだ佇まいに癒されます。6次産業化の地域農畜産物を活かした商品づくりを積極的に行なっている舞台、それが"レコルト"です。

店名の由来

「レコルト」とはフランス語で「収穫」という意味。黒田さんが組合長を務める『農事組合法人アグリード羽根』で収穫された「つや姫」を筆頭に、様々な農作物や地元食材を活かして加工食品の製造・販売にこだわりたいとの想いから、レコルトと名付けられました。レコルトには、地域で収穫された季節の果物で彩られたタルトやケーキ、プリンなどの生菓、シュークリームやドーナツ、クッキーなどの焼菓子と商品ラインナップが多彩です。同店のパティシエ一押しは「果物をたっぷり使ったタルトに、香ばしく仕上がるシュークリーム」。定番の人気商品とのこと。

こだわりの自家製米粉と自家生産小麦粉

「自家製の米粉、自家生産小麦の小麦粉で作っている」と誇らしげに話す黒田さん。米粉は自慢のつや姫を自家製粉し、小麦粉は自家生産の小麦を特定のメーカーに依頼し製粉しています。そこで、こだわりの"生きた小麦粉"が出来上がります。当初は、市販の小麦粉を使っていましたが、農家らしく小麦粉も自分たちで作ろうという話になり、栽培からはじめ、自家製の小麦粉に切り替えました。一般的な小麦粉はカビが発生することがあまりないそうですが、レコルトの小麦粉はカビが発生することもあるので、保存方法には特に気を使います。3名いるパティシエも「風味や香ばしさ・旨味など、ここの小麦粉はできが違う」と絶賛。


〝たまたま〟

「私の惣菜がみんなに美味しいって言われたのが、一番のたまたまかな」と苦笑いする黒田さんは、16年前までJA職員として集落営農の普及・推進などを担当していました。42歳で退職後、法人を設立し11ヘクタールの農地から徐々に面積を広げ、現在37ヘクタールまで農地を集積し、組合員数18名(うち専従組合員3名)で若手専従者を中心に経営。つや姫を主とした水稲、大豆、ハトムギ、さつまいも、小麦、大麦の栽培を行っています。当時から推奨されていた6次産業化は、そう簡単にはいかないだろうと思案していた黒田さん。ところが色々な"たまたま"がタイミングよく重なります。若手専従組合員が順調に仕事に慣れてきた頃、"たまたま"私が家で作った惣菜を地域の方が食べ、美味しいからこれも商品にして欲しいと言われ、"たまたま"公民館が空き、"たまたま"腕利きのパティシエが地域に現れた。食材は、米を中心に誇れる農 作物がたくさんある。こんなにも"たまたま"が揃えば、このチャンスを逃す手はないと6次産業化に大きく舵を切ります。

順調な滑り出しが一変

加工場の改修から始まり、次いで店舗。と、同時に商品開発も行うなど、とても忙しい毎日でしたが、夢に向かって流す汗は心地よかったと語る黒田さん。その後、2018年に無事オープンすることができ、順調にすべりだしました。 加工品は、既に決まっていたJAしまね斐川地区本部グリーンセンターでも販売を開始し、リピーターもでき、売り上げを伸ばしていました。しかし、昨年の新型コロナウイルス感染拡大の影響をもろに受け、今は苦境に立たされています。「この記事を読んで、少しでも応援してもらえたら、うれしい」と黒田さんは話します。

農家だからこそのこだわり

"たまたま"から始めた惣菜製造も、自家製米粉や小麦に地元の農産物をコラボさせることで、農地と地域を守っていくという黒田さんらしい「こだわ り」がいっぱい詰まっています。肉みそシリーズは、自家製味噌やしまね和牛を使い、「えごま椎茸」は、斐川町産のえごまを使うなど、全て県内産の食材にこだわっており、毎年すぐに完売します。

〝面白い〟という夢に向かって

農事組合法人アグリード羽根では、若手専従が頼れるパートナーに育ち、農家が作る作物を活かしてくれる仲間もでき、専従組合員になりたいという若者も増えました。もう少し拡大を図り、生産手法、販売手法を模索します。黒田さんは「何より地域の方々に応援してもらい、メンバー全員で中長期的な"面白い"という夢を描き、その声を聞きながら賑やかに楽しく成長していきたい。そのためには、力を合わせる必要がある。そしてそれらを次の世代に繋げていきたい」と真っ直ぐな想いを語りました。



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