つながるコラム「絆」 vol.41 隠岐の島町・島の香り隠岐藻塩米

隠岐地区本部

隠岐の島から「島の香り」を伝え、届け続ける!

隠岐の島町・島の香り隠岐藻塩米

隠岐地区本部 
島の香り隠岐藻塩米生産部会副部会長 石田 哲広さん

五箇地区内を中心に全体で12haの田畑で米や蕎麦、黒大豆などを栽培している石田さん。令和2年度はそのうちの4.2haで「藻塩米きぬむすめ」を栽培しました。
藻塩米は、島の特色を生かした製法で作る特別栽培米(減農薬、減化学肥料)で、穂が出てから収穫までの間に藻塩の水溶液を噴霧して栽培します。海藻アラメを田んぼに肥料として播(ま)いていた伝統農法を現代版にアレンジして作り始めました。日本では珍しいアルカリ岩から構成する島のキメ細かい土には、マグネシウムが県内の平均より1.5倍前後多いとされています。さらに特徴的なのが、藻塩を薄めた水溶液の噴霧。稲に極限までストレスをかけ、ミネラル成分を根と葉からたっぷり吸収させ、養分を蓄えることで美味しいお米ができます。特選以上は主に関東・関西・中京方面を中心に出荷し、米専門店などからも高い評価を得ており、島根のブランド米となっています。

挑戦することが農業の醍醐味

石田さんが本格的に米作りを始めたのは平成26年。高校を卒業後、地元企業で勤めながら家業の田畑を手伝っていましたが、将来のことを考え兼業ではなく、専業で米作りをしようと農業の道を選択しました。JAや役場、今の生産部会の村上淳一部会長にもサポートしてもらい、様々な制度等も活用し、親からの経営委譲というかたちで新規就農しました。
就農当時、既に藻塩米の生産方法は、確立され安定した生産ができ、販売についても順調に推移しており成熟期にありました。ただ、生産部会としては、それに甘んじることなく前進しようと「美味しまね認証」を取得した生産者に限り、藻塩米きぬむすめの生産をすると決め差別化を図ることとしました。 「美味しまね認証」には、設備投資等クリアしなければならないことがありましたが、石田さんは自作で作業場を作ったり改修したりといろいろな人の助けを借りながら認証を取得しました。この経験で改めて勉強になることもたくさんあり、自身の農業を見つめ直す機会にもなったそうです。

スマート農業にもチャレンジ

ご自宅にお邪魔した際、まず目に飛び込んだのがドローン。藻塩米のプロモーション用に稲作風景や隠岐の島の魅力を伝える風景などを撮影し、販売先でお客さんに見てもらっているとのこと。 昔から機械いじりが好きで、若い頃は車を自分でいじって遊んでいたそうです。今では農機具のメンテナンスにすごく役立っており、部品の交換などはほぼご自身でされます。 ドローンもそうですが、農業に使える機械や技術がここ数年で飛躍的に伸びてきており、石田さんも今年からGPSを利用した高精度ガイダンスシステムを導入し、耕耘作業や田植え作業の効率化、省力化、高精度化に取り組み始めました。またアグリノート(スマホやタブレット入力の栽培・作業履歴の管理)の導入による生産工程管理の徹底も行っています。今後は、農機具の自動操舵化や農薬散布のドローン導入など、さらに効率化・省力化を目指しています。

人との関わりを大事に、次のステップへ

認定農業者となり、生産部会の副部会長も務めるようになった石田さん。先輩方に比べて経験は浅いですが、やっていると良いことも辛いこともたくさん経験しました。
今年の夏は、水害で機械が全て水に浸かりましたが、周囲の人の協力もあり、修理・メンテナンスをしてなんとか収穫に間に合わすことができました。ただ、こうした辛いことも、消費者に「おいしい」と言っていただくことで全てが吹き飛びます。販促会で東京に行った時のことです。お世話になっている米屋さんが、自分の名前の入った藻塩米を一生懸命売っている姿を見た時には、嬉しいとの感情と同時に「自分たちも、もっともっと頑張って、美味しい良い米を作らないと!」と身が引き締まる思いがしたそうです。

隠岐の島から「島の香り」を伝え、届け続ける!

隠岐でも耕作放棄地が問題になっています。放っておけば確実に田畑は荒れていきます。石田さんは、島の農地を守るため、こうした放棄地を借受け、活用していく努力もしています。ブランド米として評価を受けるようになるまでに、JAや役場、関係機関、問屋、米屋など挙げればきりがないほど多くの方にお世話になったそうです。
 「これからも人と人との繋がりを大事に、高品質化・生産量アップ、美味しまね認証による安心・安全な米作りを目指し続けていきます。産地でできる努力を積み重ね、磨きをかけ、美味しい「島の香り隠岐藻塩米」を届けることこそが皆さんへの恩返しになると確信しています」と将来像を描く石田さんでした。



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