つながるコラム「絆」 vol.40 出雲市・ひらたの柿

出雲地区本部

平田の柿は打ち出の「こづち」!?

出雲市・ひらたの柿

出雲地区本部 
出雲平田柿部会 川瀬 利治部会長

出雲市の北東部に位置する平田地区。島根半島を東西に走る北山山系。その南向き斜面の丘陵地で「ひらたの柿」は栽培されています。十六島へと繋がる山間にある川瀬部会長の圃場でお話を伺いました。
ひらたの西条柿は60年以上の歴史を誇ります。広島県から入ってきたといわれ平田地域で栽培しやすいよう、農業試験場にて品種改良。試行錯誤してできあがったのが西条柿「こづち」です。

入ってきた当時は柿の溝は浅く、北山山系のミネラルを豊富に含んだ重粘土質での栽培に適し、品種改良を繰り返す中で溝が深くなり、今の形になったそうです。その形が「小槌」に似ていること、出雲大社のお膝元という縁起も担ぎ「こづち」というネーミングになりました。全国でもトップクラスの甘さを誇るひらたの西条柿は、先人たちの努力で開発され、平田地域に根づき今日に至っています。

先人たちの取り組みを誇りに前進!

柿の栽培は、年明けから春先(1〜3月頃)にかけての施肥、剪定作業から始まります。4月頃から発芽、5月に開花しますので、この頃に最も大事な作業の摘蕾を行います。この摘蕾作業で、その年の収穫が決まると言っても過言ではありません。玉太りを良くし、糖度を上げるため、また樹木を守る上でも欠かせない大事な作業です。良い果実が実るように、良い蕾を適度な間隔で剪定。とても神経を使う作業です。摘蕾が終わるとすぐに夏。夏枝管理・枝つり、防除などの管理を行いながら摘果作業が始まります。
柿栽培では一枝一蕾を基本とし、下または横を向いて奇形・病害のない果実を見極め、摘果していきます。もうこの頃には、その年の収穫、柿の出来が分かりますので、今年はいいぞ!という瞬間はやはりなんとも言えない嬉しさがあるそうです。今年はまさにその年で、天候も柿にとってとても良く、出来が良いそうです。今年も美味しい柿が食べていただけそうですよ!
そして10月初旬から12月中旬頃まで出荷を続け、一年が終わります。

新しいことにどんどんチャレンジ

川瀬部会長は部会員の減少、高齢化傾向など、次世代に引き継ぐために何が必要なのかを常日頃から模索し、チャレンジを続けています。
近年ではジョイント栽培という栽培方法を取り入れ、新たなチャレンジを始めています。ジョイント栽培とは、柿の樹をとなりどうしでつなげて一本にするやり方で、側枝は主枝の両側にムカデの足状に規則正しく並び、作業性もよく「早期成園化」できるのが特徴です。この栽培方法であれば低木で栽培でき、作業効率も大幅に改善できる上、高齢者でも安全に作業できます。
また市場や消費者のニーズを的確に捉え、売れるものを作るということにもチャレンジします。例えば若い女性から「味が良く、歯応えも良いと評判」と直売所で得たヒントを参考に、太秋・陽豊の生産を増やしているのもその一つ。平成29年3月にはスーパークーリングシステムという冷蔵庫を導入。足の速い西条柿を計画的に保存・出荷・加工することに非常に役立っています。さらに同年にはJAと共同でリース団地4.7haを造成し、生産規模拡大に取り組み、UIターンの若い新規就農者も徐々に増えていきます。

後継者の育成にも尽力

今は生果用、加工品ともに生産・出荷・販売と順調ですが中長期的な目で、後継者をいかに育てることができるかというのが大きな課題。  まだまだ「柿栽培はいいですよ」なんて簡単に言えないとのこと。とあるアグリビジネススクールの挨拶の中で「遊び心で柿づくりはできません」と新規就農希望者を前に、ついつい厳しい話をしたことも。


サラリーマンの経験を活かして

川瀬部会長はサラリーマン時代から数えると、柿の栽培はかれこれ25年になるそうです。今から約5年前に退職され、それを機に親から譲り受けた圃場を家族で営んでいます。3年前から部会長になられ「ひらたの柿」のことを日々想い、取り組んでおられます。
その努力の甲斐もあり、2012年には日本野菜ソムリエ協会が主催する第12回「野菜ソムリエサミット」食味評価部門渋柿の部で大賞を受賞するなど、ひらたの西条柿はその品質、糖度の高さ、食感の良さなどの、高い評価を得ました。 現在、87戸の部会員で西条柿を主力に富有柿、伊豆柿、太秋などを約58ha栽培し、年間600tを関西や中国地方などへ出荷しています。
干し柿などの加工品にも力を入れ、主に贈答用として「島根あんぽ」「スイートパーシモン」なども製造・販売しています。川瀬部会長は、サラリーマン時代の営業・経営担当の経験から「損する仕事はやめて、無駄を削り効率を上げ、みんなで儲けよう」と部会をあげて様々なことに鋭意努力しています。前職で携わった営業や経営マネジメントなどのノウハウをフル活用し、生果と加工品の合計販売金額3億円を目標にがんばっています。今後は選果場の改修、加工品、加工場の体制改善、強化アップに向け、様々なことにチャレンジし続けたいと力強く話します。

「ひらたの柿」を、次世代へ紡ぐ。

川瀬部会長のご趣味は釣り。ただ「行きたくても農作業に部会業務などが忙しくて、なかなか行けない」と。そんな中「先日久々に農作業の合間に、息子と磯釣りへ行ってきました」と嬉しそうに語っておられました。「たまの息抜きも必要」とのこと。
「生産者はもちろん、選果場・加工場でお勤めいただくみんなと一体となって、次世代に「ひらたの柿」の魅力を紡いでいけば、後継者に上手く引き継げるはず」と、いつまでも目を輝かせながら話す川瀬部会長でした。



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