つながるコラム「絆」 vol.39 浜田市金城町・菌床栽培なめこ

いわみ中央地区本部

原木栽培から菌床栽培へ

浜田市金城町・菌床栽培なめこ

いわみ中央地区本部 
河﨑 忠さん

広島県に隣接する浜田市の山間地、金城町波佐地区で農業を営む河﨑さん。
約15年前に地元にあった電子工場でのお勤めを終えられ、それまでも趣味の範囲でしてきた農業を本格的にスタートしました。「当時は原木椎茸や葉物野菜、花など様々な作物を栽培した」と、その当時を思い出しながら楽しそうにお話しされました。今では主に、菌床なめこ、菌床平茸、ピオーネ、シャインマスカットを栽培。15年の歳月の中で試行錯誤を繰り返し、今のスタイルに辿り着きました。

工場勤務の頃から、ものづくりや様々なことにチャレンジすることが好きだった河﨑さんが最初に始めたのは、原木でのキノコ栽培でした。ただ、歳を重ねるとともに、原木栽培にかかる労力がだんだん負担となってきました。特に山に入り、抜き切りという原木栽培に適した木を伐採し、原木を運ぶ作業が大きな負担で、これがなんとかならないものかと・・・。

そこでいろいろ調べたりJAで話を聞いたりしていると、菌床栽培という方法があることを知り、約10年前に菌床栽培に切り替えました。それまでの山に入るという煩わしさから解放され、スムーズに栽培ができるようになりました。菌床に切り替えたことを機に椎茸は止め、なめこ・平茸に専念。特に自分のスタイル、性格にあっているというなめこに重きを置き、栽培を行っています。

菌床栽培の
取り組み易さが○

なめこ、椎茸、平茸の菌床栽培は原木栽培に比べ、いろいろな意味で「取り組み易い」。原木栽培は原木の切り出しから植菌、井桁積みなど、収穫まで時間と労力がとてもかかりますが、菌床栽培は前段の手間が比較的少なく取り組めます。一つのブロックも軽量で、高齢者でもそう負担になりません。年間の作業も重労働ということは殆どなく、春から夏にかけて培養し、秋口から発生し、収穫のシーズンが始まります。発生・収穫の時期になると、朝晩の水やり(含水)や加湿器を使った湿度管理、温度管理などを毎日行いますが、管理はとてもし易いです。発生が始まると1ブロックで2~3発生を目処に3月頃まで収穫・出荷が続きます。



河﨑さんが所属する「菌床平茸生産組合」には11名が所属しており、生産規模は様々。大規模に取り組んでいる所もありますが、中・小規模で他の作物との兼業が大半です。他地域同様、組合員の高齢化が進んでいますが、そうした高齢者にも取り組み易いのが菌床栽培とのことです。河﨑さんの場合は、隣町の邑智森林組合で作られる菌床ブロックをJA経由で購入。自宅横に菌床栽培用の小屋を設けて栽培しています。作業面でも時間の面でもとてもいい環境です。「あえて苦労というか辛い点をあげるとすれば、思わず大量に発生した時、収穫が忙しくなってしまうことかな」と笑顔で話します。収穫を効率的にできるよう計画し、湿度や温度管理を行いながらやってはいるものの、突然・・・ということもあります。収穫に手が回らず、成長させ過ぎて通常の出荷ができないことも。ただ、そんな時も日頃からお世話になっている産直市場などに並べさせてもらい、大きなままを販売することもあるそうです。「びっくりするほど大きな平茸やなめこが産直市場に並んでいる時は、私の育てた平茸かもしれません。品質や味に問題はありませんので、大きさにびっくりしながら味わってみてください」

暮らしの中の楽しいを
充実させるために

同じく農業を営む息子さんご夫婦、お孫さんと7人で同居をされているという河﨑さん。息子さんご夫婦はトマトを中心に栽培。毎日一つ屋根の下で一緒に生活し、お互いの農業について干渉はしないものの、ときには相談したり、手を貸しあう毎日。「年寄りにとってはこの上ない暮らし。今後の目標は現状維持」と笑顔で話します。

菌床栽培、ピオーネ、シャインマスカット、いずれもこれまで蓄積したノウハウを活かし、「無理をせず」「楽しみながら」が長く続けていくことの秘訣。初夏のぶどうから始まり秋から早春までの菌床栽培、と年中JAや産直市場との関わりを途切れさせないことも、河﨑さんが大事にしている事のひとつです。一定程度の収入を確保し、時間を有効に使い、身の丈にあった取り組み方で自分のスタイルを貫くのが河﨑流とのこと。

趣味で飼育されている鯉や金魚、メダカは、「決して高いものや高級品ではないが、自分が気に入ったものにはとことん手間暇をかけ、長く付き合う。妻との付き合いより長いかも」と笑う河﨑さんでした。

バックナンバーへ >>