つながるコラム「絆」 vol.36 大田市・アスパラガス
大田市・アスパラガス
石見銀山地区本部
岩﨑勝男さん
今回のピックアップはアスパラガス。大田市でアスパラガスの栽培に取り組む岩﨑勝男さんを取材してきました。春から初夏にかけて旬を迎えるアスパラガス。「石見銀山アスパラガス生産組合」の組合長である岩﨑さんは、平成15年に勤めていた会社を退職してから、アスパラガスの栽培を始めました。岩﨑さんが栽培を始めた約1年後生産組合を立ち上げることになりました。結成当時は20名ほど所属していた組合員でしたが、大半の農家が露地栽培だったので、風や雨などで擦れた部分から菌が入ってくる「茎枯病」が出てしまい、その病気を対処することが難しく、栽培を辞めてしまった方がたくさんいました。大田市ではその状況をなんとかしようという取り組みが始まったのです。
高畝栽培の導入
再度、大田市でアスパラガスの生産を復活させようという思いから、生産組合でも県外への視察、研修などを積極的に行い、担い手の確保にも力を入れていきました。3年前にはアスパラガス栽培の先進地である香川県の試験場へ視察に行き、そこで学んだ「高畝(うね)栽培」は、畝を約60cmほどに持ち上げて作り、苗を定植させるという方法。さっそく組合でもこの栽培方法を取り入れました。最初の畝を高く作る作業はとても重労働ではありますが、その後の作業負担はかなり軽減されます。
ハウス内に作る畝と畝の間の通路を広く取れるため、光が入りやすく、光合成がしやすくなり、株の成長が促されます。風通しが良くなることで、病気の発生も抑えることができます。また、通路が広いということは、作業用の機械が入りやすいので、堆肥の投入作業もやりやすく効率が良くなります。このような利点から、この方法を取り入れたことで栽培を始める農家も増え、大田市全体の生産量も拡大。今では組合員は11名にまで戻りました。根を育てるために重要な土づくり
岩﨑さんは、現在2.4アールのハウスを所有し、当初から行っている平床栽培で今もアスパラガスを育てています。年間を通して一番大変なのは、立茎(りっけい)作業とその後の茎の管理。春芽の収穫が終わった後、茎を残して立てていきます。萌芽までの土づくりがとても重要であり、かつ、重労働だと言います。その後もハウスを締め切り、温めることで土を養生させ、茎の成長を促します。そうして、手間隙かけて育てていき、やっと収穫の時期を迎えたアスパラガスの春芽は、十分に栄養と甘みを蓄え、美味しく育っています。
大田市の特産品農産物No1を目指して
昨年度は石見銀山アスパラガス生産組合の産地ビジョンを掲げ、様々な方面からサポートを受けつつ、生産量の拡大に取り組みました。このビジョンは「儲ける経営の実践(反収向上)」「規模拡大に向けた仲間づくり(栽培面積拡大)」「安心・安全なアスパラづくり(販路開拓・ブランド化)」の3本の柱から構成されています。品質を第一とし、安心安全なアスパラガス作りを目指し、生産組合に所属する全員が(島根県版GAP「美味しまね認証」を取得しています。例年、地元スーパーで試食宣伝をし、たくさんのお客さんにアスパラガスを口にしてもらう機会を設けていて、用意していたアスパラガスがすべて売り切れになるほどの大盛況となります。アスパラガスを使った料理といえば、焼肉と一緒に焼いたり肉巻きなどが定番ですが、「もっと多くの人に美味しいアスパラガスを食べてもらいたい」と岩﨑さんも自ら、気軽に調理できるレシピの開発などにも力を入れています。
石見銀山アスパラガスは、大田市内で生産される良質な堆肥を利用し、土づくりにこだわって栽培されています。柔らかく、甘みがあり、栄養豊富なアスパラガス。ぜひ一度ご賞味ください。