つながるコラム「絆」 vol.31 益田市・スイセン
益田市・スイセン
西いわみ地区本部
両見勝さん
今回のピックアップはスイセン。益田市で、スイセン作りに取り組む両見勝さんを取材してきました。益田市鎌手地区はスイセン栽培が盛んな地域。今や益田市の花として有名になりましたが、このあたりでは昔からあらゆる場所で自然に咲いていたそうです。この辺りでは米や麦、畑では葉タバコなどを作る農家が主でしたが、 国の減反政策などで出荷量を減少させることを余儀なくされました。そんな時、隣の三隅町(現・浜田市)に火力発電所が建設されることになり、そこに自生していたたくさんのスイセンの球根を掘らせてもらいました。1983年頃からそれらをこの地域の休耕田に球根を植え、商品用のスイセン栽培を本格的にスタートさせました。
手探りで始めたスイセン栽培
スイセン栽培を始めた頃、何軒かの農家が集まり「水仙部会」を結成。当時はその中で一番若かったという両見さん。栽培方法もよくわからず、ただひたむきに球根を植えていきました。時には国内でも有名なスイセンの産地である福井県越前町や兵庫県の淡路島などへ視察に出かけ、栽培方法について学びました。 スイセンは他の花に比べると作りやすく、特に肥料などを必要とすることなくきれいな花を咲かせます。また、他の農作物に比べ機械は要らず、一年を通しても草刈機があれば十分なのでコストを抑えながら栽培することが可能です。
いちばん寒い時期が出荷のピーク
通常スイセンは、12月には出荷の時期を迎えます。出荷する際にいちばん条件の良い状態は、「葉っぱが4枚、花が4つ」ついていて、さらに「はかま」と呼ばれる球根の上にある白い筒状の部分の長さも決まっており、これを一本ずつ丁寧に見分けていくのにとても労力がかかります。また、スイセンの出荷ピークは一年で最も寒い時期。基本的に露地栽培なので、天気が悪い日の切り取り作業は非常に大変です。
次の世代の人にまで届けたい
毎年、鎌手小学校では「スイセン学習」と題し3年生の児童が両見さんの畑で作業を行います。児童たちは、球根堀りから定植、そして花の切り取りと一年を通してスイセンの成長を学ぶことができます。鎌手の子どもたちにとっては、スイセンはいちばん身近な花であり、この地域を知り、P Rするための大切な存在となっています。両見さんもこのスイセン学習を通して育まれる地域の子どもたちとの繋がりを大切にしています。 昨今、どこの農家でも抱えている「後継者がいない」という課題ではありますが、両見さんは毎年楽しみにしている人たちのためにも、この美しいスイセンを次世代に繋いでいきたいと願っています。
さわやかで柔らかい香りが特徴のスイセン。益田市鎌手地区にある「唐音水仙公園」には、例年12月の終わりから2月にかけて白いスイセンが一面に広がります。日本海を背に広がるスイセンの丘の景色は圧巻で、写真を撮りに訪れる人もたくさんおられます。この公園のスイセンは鎌手地区の住民が何十年もの間ひとつずつ球根を植えた言わば手作りの花畑。住民の思いがつまった絶景を見に、ぜひ訪れてみてください。