つながるコラム「絆」 vol.14 石見銀山千両
石見銀山千両
石見銀山地区本部
千両生産組合
岩谷敬一 部会長
島根県の中部に位置する大田市。世界遺産の石見銀山があることで有名な大田市ですが、ここでは正月の縁起物として欠かせない花木の千両を栽培している農家さんがいます。「石見銀山千両」ブランドとして流通しており、名前だけでも縁起が良い!正月の生け花やアレンジメントで愛される千両の栽培、取材してきました。
今回は石見銀山千両生産組合の岩谷敬一さんの圃場に。平成元年、先代のお父さんから千両栽培を始め、それを引き継ぎ規模を拡大、平成4年の初出荷が500本、現在はハウス26棟で3万本を出荷されています。
大量の小判の如く、
赤い実がたっくさん
おもに名前がめでたいという理由からか、正月に松や梅といった縁起の良い生花と一緒に飾られる千両。栽培している畑に行くと、そこには黒いハウスが!?
岩谷さん「これは遮光ネットを被せとるんです。直射日光が当たりすぎると葉の色が褪せてくるんですよ。遮光して深緑の葉になるよう育て、緑と赤い実のコントラストがあると、見栄えが良いんです」と全国的には竹で囲った畑で栽培している所が多いが、積雪がある大田市ではハウスに支柱を立てて遮光ネットで覆うスタイルに辿り着いたという。比較的温暖な場所で自生する千両の栽培はここ大田市がおそらく、「日本の北限」という。
固く締まった、
見事なフォルム
取材したハウスの中には、平行に3列に千両がぎっしりと育っていました。根元の茎をハサミで1本1本切っていらっしゃる皆さん。ほとんどの千両は平成元年から植えたものを株として管理、その株から2年ほど成長して実が成り、太くて締まったものを中心に収穫しておられます。
千両は簡単に育つものですかとお聞きすると、
岩谷さん「栽培ノウハウが確立されてないので、試行錯誤の繰り返しでした。場所によって少しづつ気候や土壌環境が違うので、その場所に適した管理が必要になるんですよ」と1年を通じてほとんどがハウスの中で作業。
岩谷さん「新しい芽を出すための株の管理、脇芽を取って成長させる芽の見極め、場所や降雨によって水やりの頻度を変えるなど、太くて締まった千両に仕上げるよう日々の管理はたくさんあります」と植えているだけで私達が見る形に自然となるものではなく、経験に基づいた日々の作業が必要になるという。
そんな大田市の千両「石見銀山千両」の評判はいかがですか?
固選別基準に、こだわり
岩谷さん「こだわりの一つに、選別基準を厳しくしとることです。細かい規格を設けて、数人がかりで1本1本いらない葉や枝を取りながら選別していきます。等級ごとにバラツキがないので、おかげさまで市場にも高い評価を頂いております」と作業している皆さんもお話すると笑顔で明るい方々でしたが、選定中の千両を見る目は鋭く、真剣な顔付きに!現在は大阪や広島、島根の市場に出荷されています。
岩谷さん「1本当たりの房の数や、一房当たりの実の数、シンメトリー(左右対象)でバランスの良いきれいな形の綺麗な千両を、今まで以上に追求していきたいです。全国的に出荷量は多くはないですが、島根県大田市の千両をもっと多くの皆さんに知ってもらえればと、仲間を増やしながらPRしていきたいと考えています」と抱負を伺いました!
新春を彩る赤い実、
飾る喜び
岩谷さんによると、切り戻りをしながら飾るとなんと2、3ヶ月は飾ることができるという、日持ちの良い千両。技術の進歩で昨今、どこでも何でも手に入り季節感が薄れている時代。花きの世界でもそれは同じですが、日本の良さは、やっぱり四季があること!新春の正月といえば千両を飾り、季節を感じて楽しむ。
皆さん、正月には縁起物の千両を飾って、今年も良い年になりますように!
(2017年1月)