つながるコラム「絆」 vol.12 仁多の奥出雲和牛
仁多の奥出雲和牛
雲南地区本部
和泉英富さん・宏幸さん
広島県との県境に近い島根県仁多郡奥出雲町。このあたりの雲南地方は、牛との関わりが深く、たたら製鉄での物資運搬や農業等に役牛(えきぎゅう)として活用してきた歴史があります。現代では種雄牛として全国に名を馳せた「第七糸桜号」を輩出した場所で、今では盛んに肉用牛の生産が行われています。今回は牛の繁殖から肥育まで一貫経営する和泉さんの農場を取材しました。
和泉さんは先代の繁殖牛の畜産経営に参入して30年になり、16年前から繁殖した牛を自ら育て出荷されています。6年前からは大学を卒業後、農業大学校での研修を経た息子の宏幸さんも就農し、親子2代で日々、奮闘されています。
最初の取材場所は牛舎で待ち合わせ。牛舎の中には肥育されている牛が75頭お出迎えしてくれました。なんとも大きく、牛ってこんなに大きかったのか、と思うほど。
和泉さん「一番大きく育っている牛で、800キロ以上はあると思うよ」と、すくすくと肉と脂肪を蓄えている元気な牛を見せてくださいました。島根の和牛は性格がおとなしく、飼料をたくさん食べて早く育つと言われ、飼育しやすいのが特徴。
和泉さん「この地域で生まれた黒毛和牛の子牛を、そのまま大きく育てる牛を、【奥出雲和牛】としてブランド化しとるんだよ」と仁多生まれ、仁多育ちの特別な牛であることを教えてくださいました。
山の水と地元の稲藁(わら)で育つ、最高の肉質
繁殖牛は55頭おり、以前は水田だった耕作放棄地等を放牧に活用。実際、放牧地に行ってみると、水田とはいっても、そこは中国山地の麓。
段々畑のように傾斜があり、歩いて牛の居る場所に行くまでに息が上がる取材班・・・。
もともと丈夫だと評判の牛は、このような放牧地で足腰が鍛えられて強健になり、良く食べるんだなーと納得。繁殖担当の宏幸さん「健康状態や飼料やりなど、個体管理をしてます。作業にも大分慣れてきましたー」と取材班は間近に見る大きな牛にビクビクしているなか、大きな牛を愛おしく撫でながら日々の作業を説明してくださいました。
和泉さんにこだわっていることなど聞くと「牛の飲み水は山の綺麗な沢水を飲ませとります。あと藁も地元のものを食べさせます。なにより、生んだ子牛をそのまま同じ場所で育てるので、輸送のストレスがなく、それぞれの個体の性格を踏まえながら肥育できることが、美味しい肉になる大きな特徴だと思います」と奥出雲和牛という名前のブランド牛への真摯(しんし)な想いと、こだわりを説明してくださいました。
美味しい牛肉になるには、それなりの理由があるんですね!
肉本来の甘みと風味
取材で話を聞けば聞くほど、よだれが出ててくる思いです!
和泉さん「あー、来週ちょうど、牛をおろして食べるよー。年に4回、3ヵ月に1回は食べとるけど、霜降りも細かく、脂身も美味しい。やっぱり「旨い」の一言ですわ!」と笑顔で応えてくださいました。
奥出雲和牛は肉本来の風味がしっかりしていて、コクと甘みがあり、口に入れた時の美味しさが普通の肉よりも長く感じられるのが特徴。和牛のオリンピックと称される「全国和牛能力共進会」で過去に何度も受賞しているのが、その美味しさを物語る。
この味を後世に残すべく、日々努力を続ける20代の宏幸さん「規模を大きくするというより、奥出雲和牛の美味しさを皆さんにもっと知ってもらうため、将来は肉を使ったお店なども出来たらと思っています」と夢を語ってくださいました。
ふるさと納税にも採用されており、その美味しさ、間違いありません!
取材の帰路、さっそく奥出雲和牛の牛丼のノボリを見つけて直行。牛丼ながら、口の中でとろけるほど柔らかい肉質とまろやかな肉の味を堪能した取材班でした。
(2016年10月)