つながるコラム「絆」 vol.32 斐川町・ミニトマト

斐川地区本部

気軽に食べてもらえるミニトマトを目指して

斐川町・ミニトマト

斐川地区本部 
玉木真二さん

今回のピックアップはミニトマト。出雲市斐川町で、ミニトマト栽培に取り組む玉木真二さんを取材してきました。家族経営の農園で育った玉木さんは幼い頃から「いずれは自分も農業をやるんだろうな」という漠然とした思いを抱いていましたが、農業系の学校を卒業後は一旦JAに就職。そんな中、そろそろJAを辞めて家で農業を始めようと決断した矢先に、父親が病気で他界。思いがけない形で後を継ぐことになりました。

手探り状態で続けてきた5年間

玉木さんはそれまで実際に父親と一緒に作業をするという機会もありませんでした。栽培方法やコツなど父親が長年築きあげてきたやり方は一切手元に残っていませんでした。「戸惑いながらも手探りでなんとかここまでやってきたという感じです」と振り返る玉木さん。基本的なやり方はトマト部会の先輩に聞いたり、水耕栽培用の機械メーカーの担当者に聞いたりと一から努力を重ね、今日までハウス11棟の管理を維持してきました。

2つの栽培方法で育てるミニトマト


水耕栽培のバウス
土耕栽培のハウス

玉木農園では、水耕栽培と土耕栽培でミニトマトを育てています。水耕栽培は根を水に浸す方法で、土と接していないため衛生的で病気になりにくいと言われています。そして、成長が早く肥料をやればすぐに効果が出ますが、反対に少しでも間違えたり病気が発生した場合もすぐ全体に広がってしまうという難点も。それに対して、土耕栽培の場合は生育が緩慢なため、病気が発生しても直ちに何かしらの手立てを打てば全体に広がる恐れが低いという利点があります。

ハウスの中の温度は12℃に設定。日中はビニールを開け、太陽の光を浴びさせます。太陽の光が当たらないと赤く色付きません。

気軽に食べてもらえるミニトマトを目指して

現在ハウスでは、CF千果、サンチェリー、アイコなど5、6種類のミニトマトを栽培。最近は、高糖度トマトのようにスイーツ感覚で食べられるものが好まれる傾向にありますが、その場合栽培にコストがかかり、その分販売価格も高くなってしまいます。玉木さんが目指すミニトマトは、気軽に手に入り、お弁当のおかずにしてもらえるような存在。そういう理由からも、甘みと酸味のバランスが取れ、量産できるミニトマトを作っています。

新しい視点で次世代へ繋ぐ

数年前に町のショッピングセンターがなくなってしまったことをきっかけに、年1回イベントを開催。農家や各分野の20、30代の若手メンバーが中心となり、計画から運営までを実行しています。

今後はJAとも話し合いながら、栽培の様子を動画撮影や独自のノートに書き留めていくことも検討中。それは、これから現れるであろう若い世代の新規就農者のために、「何か渡せるものを形にして残したい」という思いから。玉木さん自身が就農当初に苦労した経験はもちろん、昔の人がよく言われる「感覚で覚える」ことは 難しく長い時間もかかるため、それが農業に対するハードルを上げてしまう可能性もあります。そうではなく、「この土地の環境や気候にあった栽培方法を一人でも多くの人にわかりやすく伝え、みんなでこの地域の農業を盛り上げていけるよう、自分が橋渡し役を担っていきたい」と語る玉木さん。次世代に何を伝えていけるか。目の前の作業に終われながも、日々様々な活動に奮闘中です。



バックナンバーへ >>