つながるコラム「絆」 vol.22 松江市・大根島のハマボウフウ

くにびき地区本部

昔懐かしい日本の香り 希少なハマボウフウ

松江市・大根島のハマボウフウ

くにびき地区本部 
八束町はまぼうふう生産組合長 
安部敏樹さん

島根県の東部、中海に浮かぶ面積約7k㎡の大根島(松江市八束町)。日本一の生産量を誇る牡丹が有名で毎年多くの観光客が訪れています。農産物といえば牡丹のほか朝鮮人参の栽培が盛んですが、実はもう一つ、全国的に誇れるものがあります!それは料亭などで刺身のツマなどに使われる、セリ科の多年草「ハマボウフウ(浜防風)」。 
さっそく、ハマボウフウの栽培に取り組む、はまぼうふう生産組合長の安部敏樹さんを取材してきました。

最初の取材場所はハマボウフウの出荷作業。組合員の皆さんがハマボウフウを綺麗に並べてパック詰めしたものを出荷する作業の真っ最中でした。ハマボウフウに馴染みがない取材班。これがハマボウフウなのですねと興味津々で眺めていたところ

安部さん「ハマボウフウは日本の各地の沿岸で当たり前のように自生しています。昔は春から初夏にかけ浜に出て新芽や若葉を摘む風景は季節の風物詩でした。ところが砂地の減少や食用・薬用として乱獲されたことにより自生している場所が極めて少なくなってきています」と近隣の浜辺で探してもなかなか見つけることができない、とても希少な食材がハマボウフウです。

明るい新緑の芽、
鮮やかな赤い茎は高品質の証

大根島では古くから朝鮮人参や牡丹など漢方に用いられているものを栽培している経験から約40年前からハマボウフウを栽培。

安部さん「生産をはじめた当初は葉の色が悪く、青っぽい色しか出ませんでした。組合員が手分けして電照や肥培管理など色々なことを試行錯誤して、ようやく葉が綺麗な新緑色で、茎は赤い、品質の高いものが栽培できるようになりました」とハマボウフウは病気や防虫対策などのための登録農薬がほとんどないため、有機の限られたものを使うなど生産は簡単ではありません。



安部さん「根はゴボウのような長い根・根茎を地中深くに伸ばし、その部分が漢方として使われますが根っこの部分ではなく、芽の部分を食材として出荷しています。まず砂地の畑に種をまいて1〜2年かけて根を成長させます。ある程度育ったら今度はハウスの中に定植。そうすると約1週間で芽が出はじめ、その芽を摘んで収穫します」と長い年月をかけて育てたハマボウフは芽が出はじめると数ヶ月かけて毎日どこかから芽が出るので休みなく摘み取る作業が続きます。

ところでハマボウフウってスーパーマーケットや商店で見かけないと思いますが、どんな味がするのですか?

爽やかな苦味、滋味深い香りがクセになる!

安部さん「近隣をはじめ大阪や広島、岡山などの市場に出荷していますが、スーパーマーケットや商店にほとんど流通していないと思います。おもに旅館や料亭などで刺身のツマや山菜料理として使われています。小さいサイズのものは刺身のツマに、大きいものは山菜の天ぷらなどにします。味はほんのりと苦味があり、風味深い香りが口の中に広がります」とお吸い物のお口取りをはじめ、白和えやゴマ和えなど味と香りが扱いやすい食材で和・洋・中、幅広い料理にアレンジできます。

実際に八束町ではハマボウフウをふんだんにトッピングした「防風ラーメン」があり、取材後に町内のラーメン居酒屋「まつむら屋」さんに行って食べてみました。ラーメンの上にこれでもかというくらい高級食材のハマボウフウがたっぷり。食べてみると程よい苦味とラーメンの塩気が絶妙にマッチ、さっぱりとした心地よい苦味が口の中に充満し、やみつきになりそうな美味しさです!

期間限定 花芽を食べに松江市にお越しください

マボウフウは今では希少な高級食材として扱われ流通しているものはほとんどが栽培ものです。埼玉や茨城、愛知県などで生産していますが、中国地方では八束町が一定量を生産。

安部さん「もっと多くの人にハマボウフウを知っていただき気軽に食べてもらえるように努力を続けています。ここでは5月下旬頃からの数週間の期間限定で花芽のついたハマボウフウをJAの産直市や道の駅本庄、玉湯町の八百万マーケットなどで販売しています。美味しいので是非一度、食べていただきたいです」と若い蕾と柔らかい茎・葉を天ぷらにして食べると、それは絶品だとか。
松江市を訪れ、ハマボウフウを手にいれる価値はあります!

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