つながるコラム「絆」 vol.8 大根島の牡丹

くにびき地区本部

日本一・大根島の牡丹(ぼたん)

花の王に挑む、
若き就農者

くにびき地区本部 
松本悠太さん

日本一の牡丹生産量を誇る松江市八束町(大根島)。

牡丹の花言葉は、王者の風格や高貴、壮麗など。
その華やかさになぞらえて「百花の王」や「花の王」と言われ、類いまれなる美しさで、古くからから多くの人に愛好されている。

ここ大根島には、鳥取県から移住し、新たに牡丹栽培を始めた若き就農者がいる、と聞き八束特産事業所の門脇さんのご紹介・ご協力のもと、お話をお聞きしました!

松本さんは現在27才、前職は農業とは無縁のデザイン等をパソコンで創作するグラフィックデザイナー。

鳥取県から移住し、牡丹農家になって3年目の若き就農者。

デザイン制作という農業とは全く関係のない世界から牡丹栽培に飛び込んだ理由をお聞きすると、

「縁あって大根島の牡丹の話を聞く機会がありました。後継者不足で、将来、大根島の牡丹を作る人がいなくなることを知り、就農すれば【日本一】の牡丹栽培に一役立てるのではないか、と転職を決意しました」

なんとも心強い一言。松本さんの日に焼けた肌が、露地の畑で汗をかきながら悪戦苦闘している姿を想像させる。

出荷までに5年の歳月

牡丹はどうやってできるのかを聞くと、
「牡丹は接ぎ木で増やして栽培するのですが、出荷までに最低5年かかります。それまで収入はなく、3年目の今年、接ぎ木作業をしましたが、出荷できるまでにあと2年かかります」と、種を播いて数ヶ月で花が咲くイメージを持っている、花の事が詳しくない取材班は、その出荷までの長さにびっくり!

新規就農者が少ない理由に、初出荷までに最低5年もかかり、数ヶ月単位で出荷できる農産品と違い、実際に収入を得るまでに、長い歳月を要する事が就農の大きな壁となっている。

うーん、牡丹栽培の就農、躊躇する人も多いのではと率直な印象を持った。ただ、大根島は日本牡丹としては、世界的にも有名な産地。島根県、松江市の花にも制定されており、就農にあたっては島根県や松江市、JAしまねの八束事業所など、牡丹栽培の存続を願う関係機関は、松本さんの挑戦への協力を惜しまない。

牡丹栽培の苦労することについて、松本さん「接ぎ木の土台(台木)となる芍薬と、芽を育てる牡丹の母樹、両方を栽培。その台木と牡丹の芽を接ぐ作業が難しく試行錯誤の連続です」と、それぞれ専用の小刀で、上手く活着するよう木の大きさやバランス、切り口の形を見極め、接ぎ木。

天気や病気等で牡丹が全滅しないよう、リスク対策として母樹、芍薬ともに畑はわざと点在。
そのため、松本さんは大根島の数カ所にある畑を毎日見回り、異常がないかなどすべての木を点検、病気予防の消毒など日々の管理を欠かさない。

実際にその畑を見せてもらうと、たくさんの母樹となる牡丹が顔を出す。
取材班が見ても全く分からないが、植えられている牡丹は品種がすべて違うもの。母樹は譲り受けたものなど含め、なんと約350品種!
なかには希少品種もあり、品種の多さに驚いたと同時に新たな品種の栽培もされているのかとお聞きすると
「鑑賞用として牡丹が栽培されたのは江戸時代までさかのぼります。新品種を増やす以上に、歴史ある品種を保存していかなければと感じています」と、松本さんの牡丹とともに生きていく男の覚悟が眼の中に宿っていた。

牡丹の花の最盛期は4月〜5月頃で、この時期には県内外からたくさんの愛好家が牡丹を求めてやってくる。

大輪で堂々とし、艶やかな雰囲気を醸し出す松本さんの「花の王」が、お目見えするのは2年後。
松本さんらの若き新たな就農者によって、歴史ある花が時代をつないでいく喜びを痛感した取材でした。

皆さん、日本牡丹の産地はここ、島根県・松江市の大根島です!
(2016年4月)

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