つながるコラム「絆」 vol.7 日原の山葵

西いわみ地区本部

本物の山葵(わさび)、日原にあり

清流で育つ、根茎。
これぞ本生山葵。

西いわみ地区本部 
日原山葵生産組合長・大庭敏成さん

山陰の小京都として知られる、島根県の西部に位置する津和野町。ここ津和野町日原、日本有数の清流として名高い、高津川水系の源流域で、山葵(わさび)は栽培されている。
山葵といえば、日頃から食卓で食べ慣れているという印象。しかし、取材班が現地の穫れたての山葵を味わった結論。
それは普段食べているわさびの味とは全くの別物!まさに本物のわさびの味を初めて知った!という驚愕の体験をした。

わさびは水が綺麗な谷川で育つ多年草。ここ日原には水質日本一にもなったことのある高津川が流れている。その源流となる山合いに、日原山葵生産組合長の大庭さんの圃場がある。

圃場といっても一般的な田んぼや畑という場所ではなく、そこはまさに山の中。傾斜地の圃場に渓流から引いた水が常に流れ、山葵の葉が沢山、元気に顔を出していた。

取材した大庭さん「皆さんが食べているスーパーなどで買う、練りわさびは、主にこの葉の部分が多く使われとるけー。でも根茎(こんけい)と言われるこの部分が本生と言われるワサビの一番美味しいところなんよー」
と葉っぱの下の棒状の部分を見せて頂いた。取材班のわさびのイメージはまさにこの棒状の根茎の部分。
普段食べているわさびはこの部分だけをすりつぶしたものを食べていると思っていた、、、。

ここで今回大庭さんを紹介いただいたJAしまね西いわみ地区本部の鳥山さんが、「この山葵味わってみますか」と、嬉しい一言!
なんとも優しそうな鮫皮のおろし器をお持ち頂いて、実際に味わわせてもらいました。
「の」の字を書くように、とても優しく山葵の根茎をおろし器にあてる鳥山さん。おろし器にあたっている部分が、滑らかに徐々に、根茎にまとわり付くように擦られていった。

1年半~2年かけて織りなす、粘り。
風味高き、香り

文章で表現するのが難しいが、山葵を口にした瞬間、衝撃が走った。口に山葵を入れた瞬間、ツーンッとした辛み。ここまではいつものわさびを食べた感覚だが、その後の感覚が、まさに初体験。ツンとした辛みとともに、口と鼻ではっきりとわかる清らかで、なんともいえない爽やかな風味が支配した後、ほんのり甘い感覚が口に残る。そう、本当の山葵の風味は、まさにこの味わいだという。

そしてわさびといえばサラッとしたイメージが強いが、美味しい本物の山葵、特に島根の山葵は擦ると少し粘り気がある。
大庭さん「焼き肉に付けて食べたら、そりゃー旨いよー」と聞いて、口の中が唾液たっぷりとたまった取材班だった!

山葵は、苗を植えてから根茎が出荷できるまで生育するのに1年半~2年かかる。
中国山地の厳しい冬に耐え、清流の水を受け続け、長い期間をかけて独特の香味をまとい、本物の山葵が育つ。

昭和初期には、「東の静岡、西の島根」と呼ばれるほど、島根のわさびは西日本の高級料亭等で重宝され、食通の間では知られる貴重なわさび。しかし、過去の大水害や生産者の高齢化・後継者不足等で、生産量は激減。近年は、減っている生産量をなんとか増やそうと加工用の葉わさびをハウスで栽培。
JAしまね 西いわみ地区本部と、大庭さんをはじめとした生産者がタッグを組んで、山葵のPRや担い手の育成などの取り組みを積極的に行い、一時は幻とまで言われた島根わさびの生産拡大に向けた努力を続けている。

出荷は、主に九州や東京などの料理屋さんなど。
「皆さんが味わいたいと思ったらどこで買えますか」
鳥山さん「先ほどの料理屋さんのように、JAしまね西いわみ地区本部 グリーンセンターひまわりに直接注文するか、道の駅シルクウェイにちはらで販売しています」

本当の生山葵の風味を知る人は以外と少ないかも!?
さっそく買って帰って、周りの人にこの山葵を味わってもらおう!
(2016年3月)

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