つながるコラム「絆」 vol.46 松江市 藤井 秀樹さん

くにびき地区本部

新たな特産として期待される「くにびき南瓜」

藤井 秀樹さん(34才)

くにびき地区本部

興味があった農業の道へ

松江市東出雲町にある中海干拓地。ここは広大な敷地に農業機械を用いた大規模な営農が可能で、主にキャベツの産地となっています。藤井さんは、ここで新たな特産として期待されている「南瓜」の栽培に取り組んでいます。以前は食品の卸売業者で働いていましたが、実家の祖父母がしていた農業を見てきて興味を抱き、新規就農を決意しました。その後、松江市が行う産業体験やJAしまね・県・市が連携して開催している「だんだん営農塾」でキャベツコースを受講。それと同時に農家での研修もスタートさせました。現在は独立して2年目。春・夏は南瓜、秋・冬はキャベツを中心に一人で農地を管理しています。

新たな特産として期待される「くにびき南瓜」

藤井さんが独立を目前に控えていた頃、JAしまねくにびき地区本部の担当者は、どうすれば若手農家たちが持続的な農業ができるか、将来を見据えたビジョンを思考していました。秋冬のキャベツは、近年の価格低迷と新型コロナウイルスの影響で経営が不安定。また、他の作物を始めるには、資金を確保することも難しいのが現状でした。そんな課題を目の当たりにし、安定して収入を得られる作物や方法はないかと探していたところ、タイミング良く出会ったのが「ブラックのジョー」という品種の南瓜でした。南瓜は価格が安定的で、出荷数量が確保できれば良い収入源となります。また、一部にキズ等がついてしまっても、その部分以外を切って地元の産直市へ直接出荷することでロスを減らすことも可能。さらに、松江市の協力を得て病院や学校給食で も使用され、地元農家の野菜を安心して食べられる地産地消にも貢献しています。こうして現在、「くにびき南瓜」は若手農家の経営の基盤になると同時に、この地域の特産としても注目されています。

時期をずらしながら年中何かを栽培できる環境を

この地域で南瓜の生産を始めようと思った理由がもう一つあります。栽培方法や時期の工夫次第では秋~冬に収穫を迎えるキャベツに影響を与えないからです。この地域で取り入れられているトンネル栽培では、キャベツの収穫が終わりそうな時期に定植を始めることができます。トンネルを張る作業など手間はかかりますが、この方法を用いて早い時期から定植を始めることで、同じ農地で2つの作物を作ることが可能になります。

手作業が多い南瓜の栽培

前述の理由とJAからの勧めもあり、藤井さんは独立と同時に南瓜の栽培も始めました。しかし、 営農塾や研修で学んだキャベツとは栽培方法が異なる南瓜。キャベツはほぼ機械作業に対し、南瓜は機械でできない作業も多く、最初のトンネルを張る作業からすべてを手作業で行います。また、南瓜は地面に着くと黄色くなってしまう特性もあり、それを避けるためマットを一つ一つ敷き、色回りにも気を配ります。「どの作業も大変ですが、元々、一人で黙々とやる作業が好きなので、南瓜の栽培は自分に合っています。どちらかと言うと、機械作業の方が苦手かも」と苦笑いする藤井さん。JAの担当者は「真面目な性格の藤井さんだからこそ向いている作業なのかもしれません」と話します。


意外な一面も

奥さんの実家が神社のため、祭りや行事の際には「権禰宜(ごんねぎ)」としてお手伝いもされる藤井さん。また、料理をすることが好きで時々腕を振るうこともあるそうです。ちなみに自分が育てた南瓜は奥さんが料理することが多く、一番好きな食べ方はシンプルに天ぷら。力仕事が多い農業の傍、意外な一面を覗かせてくれました。

たくさんの方に食べてもらいたい

実は就農するタイミングでお父さんが退職を迎えられたので、本来なら二人で一緒に農業をするはずでした。ところが、昨年お父さんが急逝。「父の分も自分が頑張らないと」と前を向く藤井さん。今は目の前の仕事を必死にこなしていますが、今後は全体を見ながら効率よく作業ができるようになり、もっと収量を増やしていきたいそうです。そして、何よりも「丹精込めて作っ た、くにびき南瓜をたくさんの方に食べてもらえるよう、魅力を伝えていきたい」と意気込みを語る藤井さんの挑戦はこれからが本番です。



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